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ソルジャーブルーのTSのレビュー・感想・評価

ソルジャーブルー(1970年製作の映画)
4.0
【血で血を洗う争い】85点
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監督:ラルフ・ネルソン
製作国:アメリカ
ジャンル:歴史
収録時間:112分
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ずっと気になっていた作品で、やっとdvd購入して見ました。米国史上最も恥ずべき愚行と言われる「サンドクリークの虐殺」を描いた作品であり、宣伝文句の通りラスト15分は凄惨なものになっています。まさに血で血を洗う争い。復讐の連鎖はどこかで切らないと半永久的に続いてしまいます。人間はこうやって肌の色が違う、生活文化が違う、言葉が違うということで大量虐殺を頻繁に行なってきました。いかに今が平和的であるのかというのも思い知らされました。

開拓時代のアメリカ。コロラド州にて北軍兵士たちは現金と、砦に婚約者が待つという女性クレスタを運ぼうとしていた。しかし、そこに武装したインディアンのシャイアン族が攻めに来るのだが。。

陽気な歌から始まり、ほのぼのとした話になるのかと思いきや冒頭からいきなりインディアンが攻めてきます。彼らの目的は現金略奪と後にわかるのですが、クレスタと新米兵士のホーナス以外は皆殺しにされてしまいます。これを相当恨んだ北軍兵士が後に彼らの集落を襲うという「サンドクリークの虐殺」を起こしてしまうのです。

確かに最初だけ見れば北軍兵士たちが哀れであり、インディアン達が悪に見えます。しかし、今作がそれまでの西部劇作と決定的に違うのは、アメリカ側の愚行ももれなく見せているというところにあります。名作とされる『駅馬車』でもこれは出来ていません。彼らインディアンは自分たちの地を守ろうとしただけ。そこに15世紀末からずかずかと蹂躙してくる欧州諸国は一体何なのでしょうか。彼らには啓蒙思想という非常に恩着せがましい考えがあり、文明が遅れている先住民を支配していくというのは甚だ迷惑な話であります。そしてそこで殺人が行われて、恨みをもったインディアンが復讐をし、それに恨みをもったアメリカが復讐をし、、と復讐の連鎖が途絶えることはありません。

これを途絶えさせるには和平を結ぶか殲滅するか。残念ながら後者は歴史的によく行われてきました。そこには人権の考えも何もない。しかし、和平を結ぶという手もある。今作のシャイアン族の長であるまだら狼も最初はそれを望んでいました。哀しきかな、最後までそれを拒んだのはアメリカにいる白人なのでした。
その後の虐殺はもう見てられない。殺人、強姦、放火。どういう環境にいればこうも簡単に人を虫螻みたいに殺すことが出来るのでしょうか。しかし、人類の歴史は戦争の歴史であると同時に虐殺の歴史でもあると思います。今のこの平和な時代の方が珍しい。末恐ろしい限りです。

今作はアメリカの負の歴史を堂々と真正面から描いた映画です。これ以降、インディアンを否定的に描いた映画は現れなくなった模様。そういう点においても非常に価値のある映画と言えそうです。ラストが強烈ですが見るべき作品です。
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