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スパイナル・タップのdm10foreverのレビュー・感想・評価

スパイナル・タップ(1984年製作の映画)
4.2
【What the hell is this!?】

もう、そのまんまです。『なんじゃこりゃ~?』ですよ。
とにかくオモシロイ!ず~っと小ネタで笑わされてる感じ。
しかも本人達は至って真面目にやってるわけだから、その分の反動が振り幅となって襲ってくる。

まじ【ロブ・ライナー天才かよ】って話です。

スタンドバイミーよりもミザリーよりも前にこの作品を撮ってたなんて・・・マジ神だわ。
奇しくも今年はQueenのヴォーカル「フレディ・マーキュリー」の自伝的映画「ボヘミアン・ラプソディ」が公開されるという事もあって、この作品も非常に気になっていたので即鑑賞を決めました。
と言っても札幌では1週間くらいしか上映しませんが・・・。


この作品は「60年代に一世を風靡したイギリスの伝説のロックバンド『スパイナル・タップ』がニューアルバムを引っさげて全米ツアーを行なった際の模様を撮ったロキュメンタリー(ロック×ドキュメンタリー)」という設定のフェイクムービーである。
しかし、スクリーンに映し出された彼らは確かに「スパイナル・タップ」だった。
そこには純粋なロックンローラーだけがいるんです。
それは単純に音を奏でているとか歌を歌っているとかそんな抽象的なことじゃなく、生き様や考え方がいい意味で「擦れていない」というか「純粋」なんです。思った事、感じたことを真っ直ぐにギターやベースのサウンドに乗せて、真っ直ぐにオーディエンスに届ける。
しかし、あまりにも真っ直ぐすぎるために様々なところでトラブルも発生してしまうんだけどね。
バカと天才は紙一重なんてよく言うけど、本当に彼らはその紙一重の端を綱渡りよろしくフラフラとふざけ合いながら歩いているようなもんだった。
でも、彼らは本気だった。
本気でバカをやっているような感じだった。
だから尚更笑えるし、尚更彼らが好きになる。

この作品にはミュージシャンを描く際によくありがちな「酒」「SEX」「ドラッグ」が殆ど出てこない。本当に不思議なくらい出てこない。
基本的にインタヴューは木漏れ日が差し込む庭先やハンバーガーショップなど、おおよそ「ガチガチのロックンローラー」は似つかわしくない場所で行なわれる。
でも彼らは一生懸命にバンドや仲間について熱く語る。
そのロケーションとのギャップが堪らなく可愛いんです。
40過ぎのおっさん掴まえていう言葉じゃないんだろうけど(笑)。

で、真面目な顔して「歴代のドラマーが何故か不審死が原因で入れ替わっている(おいおい、笑えね~よ)」って話を真面目なトーンで言うんですが、もう、なんならその件すら笑えてしまうんですよね。
彼らに笑わすつもりがないから尚更おかしい。

スパイナル・タップ66年のデビューから色々な形でバンドは形を変えてきた。最初はポップスから始まり、やがてハードロックに辿り着いた彼らが全米ツアーの追跡ドキュメントをきっかけに結成当時の懐かしい思い出や、メンバーへの思い、音楽への情熱、歴代ドラマーの死(やっぱり避けて通れない)・・・色々な思いを吐露していく。

でね、先にも書いたけど彼らは「純粋」なんです。
大御所のアーティストらしからぬ「童貞感」が漂っていて、それがこの作品の見事なスパイスとなっているんですね。
まるで高校生が「バンド始めました!」っていう頃の感覚のままメジャーデビューしちゃってるみたいな。
だからツアー中も様々なトラブルが次々と起きますが、彼らの持ついい意味での「素人感」も相まって笑いを堪えるのに必死でした(笑)。

エイリアンの卵みたいなセットからメンバーが出てきて演奏を始める・・・はずが、ベースのデレクのカプセルだけがどうやっても開かず、スタッフはバーナーとかハンマーとか持ち出して懸命に開けようとするんだけどやっぱり開かない。窮屈なカプセルの中で何とかベースは弾いているんだけど、そうこうしている内に曲が終わっちゃうよってところでようやく出られたと思ったら曲が終わってしまって、今度は中に戻る演出だったのに戻れなくなっちゃったり。

ストーンヘンジのセットを作って、そこで壮大な感じで歌おう!!というところまではよかったけど、発注の段階でサイズを間違えて6mのサイズのはずが45cmのミニチュアになってしまったり。

「さぁ、ライブだ!行こうぜ!ロックンロ~~~ル!!」と威勢よく控え室から飛び出したはいいけど、ステージまでの通路がわからなくて迷子になったり。

やっぱりドラムが爆死したり・・・。

それでも彼らは純粋で真面目でおバカ。そしてたまらなくキュートでカッコいい「スパイナル・タップ」。

とんでもないカルトムービーに出会ってしまったのかもしれない。
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