1988年。強盗で夫と息子を失った主人公のローラ。悲しみを癒す為に、姉と共にビルマ(現在のミャンマー)を訪れる。そこでトラブルに巻き込まれた事から、民主化運動やビルマの軍の武力弾圧の波に飲まれながらも、その中で自らの人生の意義を見つけていく実話を基にしたドラマ。
ジャンルは全然違いますが、「ランボー 最後の戦場」でもミャンマーの軍の横暴は十分描かれていましたが、本作では一人の一般人であるアメリカ人の目線から捉えています。
民主化を叫ぶ人々を次々と虫けらのように虐殺するビルマの軍。国外からのジャーナリストは入国できず、この惨状を世界は知る術がない。
「中国の天安門事件は誰もが知っているのに、ビルマの事は誰も知らない」の言葉通り。軍事政権下であるビルマの当時の現実が全編通して克明に描かれています。
主人公のローラに対しても前半は身勝手で軽率な行動が多くて、いくら悲惨な過去を背負っている立場でもイラッとしましたが、物語が進む度に人生観が変わり、命懸けで人を助ける立場へと転じていく姿には感動がありました。
生きたくても生きられない。あっさり殺されていく現地の人たちの様子を目の当たりにして、「死にたい」と思っていた考えを払拭し、「何がなんでも生き抜く」という姿勢に変わっていく彼女の姿をパトリシア・アークエットが体当たりの演技で見せてくれます。
そして後半の民衆と軍の衝突の場面、クライマックスの国境越えの場面は、戦争映画かと思うくらいの圧巻のスケール。観客側もローラと同じ目線で物語を追うので、一切気が抜けない作風も凄みがありました。
かなりの完成度を誇る作品ですが、残念ながら日本では劇場未公開に終わってしまいました。このマーク数の少なさが物語っていますが、もしレンタル店や中古DVD店で見かけたら、是非手にとってほしい作品だと思います。