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くるみ割り人形のNMのレビュー・感想・評価

くるみ割り人形(2010年製作の映画)
3.4
映像が綺麗で幻想的、それにみんな歌が上手い。
重要な場面で歌唱があるので、その歌がとても響く。

バレエ版を観る前の予習にもとても良いと思う。或いはバレエ版は何度か観たが、結局なんなのか良く分からなかった人などに。
バレエシーン自体はない。

ただ音楽はチャイコフスキーに沿っているわけでなく、関係ないものもあるので、知りたければ別のもので。
しかしこれはこれで感じた。

歌唱シーンは半分以下なのでミュージカル映画と呼んでいいか分からない。絞られた分上質ではあり、ここぞという時だけ歌うので印象的。

副題には「The Untold Story」とあり、筋立ては各原作(ホフマン、デュマ、チャイコフスキー)通りではない。

ドロッセルマイヤーさんはアルバート伯父さんとして、こんぺい糖の精は雪の女王として登場。
ラストもオリジナル。

完全に子ども向けだと、大人は途中で飽きたりするが、これは飽きない。荒唐無稽過ぎないし、しっかり伏線回収もあり、各シーンしっかり印象に残る。

そもそもくるみ割り人形の映画版、となれば大人が来ることは分かっているので、それを前提して作られただろう。

字幕版で観たが吹替版も気になる。

セリフが単純でなく、比喩的で、色んなことを示しているように思う。子どもの心を忘れた大人こそ楽しめる。
毎年のクリスマスに観たい。

メアリーはとても賢く、勇敢。
弟マックスは、いかにもこれから事態を引っ掻き回してくれそう。

最初に王子の国に行った後、現実世界に戻って初めて、家政婦と同一人物だと気付いた。見事な変身だ。
特殊メイクはもちろん、口調、髪型、体型等で、人を全く違って見せることができるのだと驚き。

父親は、はじめは優しそうだったが、あくまで常識人なので、メアリーの話を信じないし、アルバート伯父さんに会うなとまで言ってしまう。

しかし、石をなくした、という比喩には、大人の誰もが持つ悲哀を感じた。彼に感情移入する大人は多いはず。

感動の直後に笑いを持ってくるのが、感情を揺さぶり上手いと思った。

伯父さんは一体何者なのか。大魔法使いなのだろうか。
石を捨てなかった大人は、ああなれるのかも知れない。

ネズミたちはこちらを殺そうとしてくるのに対し、国民たちは「追い払う」ことを勝利としているのが平和的で、子どもに見せても安心だと感じた。

ドールハウスは30年も仕舞いっぱなしだったというのがかわいそう、と思ったが、きっとそういう問題ではないのだろう。時間概念が違う。そもそも王子は成長せず子どものままだ。

興行的には成功ではなかったらしいが、私には素晴らしく感じられた。当たり前だが、世間の評判だけで作品を観ていては出会えない作品もあると感じた。
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