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苦役列車のsoのレビュー・感想・評価

苦役列車(2012年製作の映画)
3.5
「クズ」について考えさせられる。
僕が今日本で最も好きなクズ、お笑いコンビ空気階段の鈴木もぐらはギャンブルと風俗をやめられず借金600万円をこさえたりして、本作の主人公と大体において一致するのだけど(さらに原作者である西村賢太と風貌も似ているという)、いつか彼の芸人仲間が
「クズには良いクズと悪いクズの2パターンある」
という話をしていた。
意見は分かれるところだろうが、僕は本作の主人公こそ「良いクズ」だと思う。
そして、「良いクズ」の条件とは何なのか、その一つの答えを見たような気がする。

主人公・北町貫多は、自分を曲げられないピュアさをもっている。
それは世の中に適応できないということでもあって、
家賃を滞納したり、気にくわない奴を殴ったり、好きな女の子にさえ普通では考えられないほど卑劣なことを悪びれることなく言ってのけたりする。
もちろんそれらは良いことでも何でもない、クズな言動でしかないし、
当たり前のように周りにいた友人も皆彼の元を去ってしまう。
でも、そんな友人達もかつて一人きりで心細さを感じていた時、彼のどうしようもないほどの不器用さに出会い、救われていたのだ。
愛想笑いも、ごまかしも、遠慮もない彼の言動に触れ、心の靄が晴れるような思いがしたのではないか。
トランクスでなく、ブリーフ。
「俺」でなく、「僕」。
些細な選択からもいちいち彼のピュアさが溢れ出ていて、
その生き様に愛おしさと共にどことなく崇高さすら感じるのだ。

うまくやっていくために嘘をつくのが「悪いクズ」。
ボロボロになりながらも嘘をつけずに生きているのが「良いクズ」。
「良いクズ」の彼が飲み屋で友人カップルのくだらなさに我慢ならず口角泡を飛ばして批判の咆哮を浴びせるその姿には、まさにドブネズミの美しさが漂っていた。
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