エリオット

甘い抱擁のエリオットのレビュー・感想・評価

甘い抱擁(1968年製作の映画)
4.4
イギリスの帯のホームドラマで主演を長く勤めてきたオバさん女優のジョージ(ベリル・リード)。まだまだ自分はできるという意欲とは裏腹に世代交代の波が押し寄せる。
私生活では若い情夫ならぬどこかで拾ってきた情婦のアリス(スザンヌ・ヨーク)と一緒に暮らすがこちらの関係もギクシャクしがち。
ジョージは昼間から大酒を飲み誰彼構わず悪態をつくが、それは不安と恐怖の裏返しで観ていて非常に痛い。

中年女性の悲哀と絶望を描くという点ではアルドリッチのどの作品よりこの作品が最も生々しいと思う。

レズビアン・パーティーの余興の練習を2人でする場面は楽しく同時に強烈に哀しいシーンでDVDのパッケージの写真にもなっている名場面。
ジョージをリストラする立場のテレビ局のディレクター(コーラル・ブラウン)がアリスと接近しレズシーンを演じるが、これがサスペンスフルかつ妖艶でセクシーで忘れ難い。

好き嫌いが分かれる映画かもしれないが、アルドリッチがそれまで稼いだ報酬で自分のスタジオを作って、その1作目に撮ったこの作品は、まさに彼が撮りたかった映画であり、それがこういう中年おばさんの悲哀を冷徹に描く作品だったということが非常に興味深いし面白い。
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