映画武士道

黄山ヶ原(ファンサルボル)の映画武士道のレビュー・感想・評価

4.1
日本では一般劇場公開はされなかった作品。
私以外では17レビューしか存在しない。
このアプリでも映画の詳細情報すらない。
そんな今作品だが見てみたら結構面白かった。
以下レビュー

あらすじ
第二次唐の高句麗侵略戦争の唐側について戦った新羅と高句麗側について戦った百済の戦闘を描いた作品。
黄山ケ原の戦い(ファンサンボル)は660年に起きた実際の戦いが舞台になっている。

以下wikiからの引用
新羅が三国を統一する戦争の中で行われた、百済にとっての「最後の戦い」。『三国史記』などに記されたところによれば、百済に侵攻した金庾信(キム・ユシン)率いる新羅軍に対し、百済の将軍階伯(ケベク)は10分の1の兵力(5000人)で迎撃した。階伯は後顧の憂いを断つために自らの妻子を殺害して出陣しており、戦闘に4度までは勝利するものの、最後は戦死した。敗れた百済は間もなく王都を攻め落とされ、滅亡した。

唐の高句麗侵略戦争は当時の極東地域の多くの国を巻き込みアジアの国際情勢を一変させた当時最大級のの世界大戦のようなもので、当時の日本の大和朝廷も参戦している。百済にとっては国家の存亡を賭けた不退転の戦いだった。

攻めるのは5万の大軍を有する新羅のキム・ユシン。守るはたった5000の兵で百済の命運を託された名将ケベク。
兵力差があまりの圧倒的。最初から勝負にならないような戦だがケベクは出陣に際して兵の指揮を高めるために妻子を手にかけ鎧を服に縫い付け脱げないようにし不退転の決意で勝負に挑む・・・。
というストーリー。まさに玉砕覚悟の悲壮感のある戦なのですが、序盤から中盤はなんとコメディ映画になっています。
最初の場面で各国の王様や皇帝同士が集まって会議しているのですが殴り合いの喧嘩をしたり、サッカーの試合のサポーターような兵たちによる応援合戦があったり、百済の王様の命令が「あれ」をしてくれ頼む。「あれ」をするときがついに来た。
ケベクの命令も鎧を「あれ」しろ。みんなで「あれ」をすれば必ず勝利する!
あれ?って何なの?(笑)と笑っていたのですが、作中でも新羅の将軍のユシンは百済陣営にスパイを放っていて軍事作戦の機密情報を持ち帰るのですが内容が「あれ」ばかりで意味がさっぱりわからない。暗号解読のプロを呼び解読に当たっても意味が分からない。
あまりに敵軍の作戦が「あれ」なのでうかつに戦闘するとこちらが全滅するのでは?と、戦闘をするのが恐ろしくなり兵力差10倍にも関わらずあいての「あれ」の内容がわかるまで戦えない。同盟軍の唐から合流の期日を指定されているのにも関わらず戦闘行為を避けてしまう。
後で判明するのは結局「あれ」というのは当時百済の方言みたいな感じで特に深い意味はなかった(笑)
面白い。
一見笑える様子なのですが新羅軍の将軍は優秀。
戦闘というのは基本的には大軍を有している方が勝利するものです。大軍を擁している将軍は強気に力責めをしがちなのですが、兵力が大きいから必ず勝つというわけではなく大軍を有している方が相手の凄い奇策によって負けることが往々にある。
相手の作戦を知って必勝を期す。という慎重さは大事。で数の多さを頼みに無茶しないのはいいことですね。
ですが戦争において相手の作戦が事前にわかるというのはそうそうあることではないので相手の作戦がわかるまで戦闘しないというのはちょっとやりすぎかも。
あの手この手で相手の作戦を探る新羅のユシン将軍。
そんな中で新羅のユシン将軍は有名な花郎(ファラン)部隊の投入を決意。
花郎は韓国ドラマなどで有名な実際にあったイケメン集団です!

以下コトバンクから引用
貴族の子弟からなる青年集団が奉戴(ほうたい)した美少年。またそうした習俗。美少年を粧飾して花郎とよび・・・

と、あるのでイケメン貴族集団だったのは本当みたいです。

そんな花郎にユシン将軍が何をさせたか・・・それは死んでこい。というもの。
兵の士気は高貴な人間が死ぬと上がるもの、それも当時の人の憧れだった花郎が死ねばあがるという作戦。
本当に恐ろしい作戦。イケメン花郎たちがが化粧をさせられ単騎で敵陣に次から次へと送り込まれ死んでいく・・・相手が殺すのをためらい生きたまま送り返されると再び死ぬまで何度でも単騎で敵陣に突入させられる。

私は孫子の兵法は読んでいますが、もちろんこんな作戦は書いてありません。
だからと言って兵の命を無駄にしている酷い作戦かというとそう言いきれるものではなく
春秋の呉越戦争時代の名将范蠡が決死隊を集めて敵の目の前まで行かせてそこで自ら首をはねさせ呉軍が仰天している隙を付いて越軍は呉軍を撃破した。という奇策の前例がある。

さらにユシン将軍の奇策は続く(10倍差の兵力が多い方が奇策を繰り出し続けるというのも凄いです)
雨が降りそうな日に部下に泥団子を大量に作らせる。そして戦闘中に投石器で敵陣に打ち込む。泥団子を食らった敵兵は鎧が泥だらけ。その泥が乾いたころには鎧が泥で固まり動けなくなる。そのため敵は鎧を脱がざるを得なくなり弱体化。

ほんといろんなことを考えますね。
面白いです。

そして名言もたくさんありました。
「人はどんなに気高く生きようとも自分の肘も舐められない愚かな生き物だ」
「強いやつが生き残るんじゃない、生き残ったやつが強いんだ」
「虎は死んで皮を残す。人は死んで名を残す。だが俺はお前を残したい」

やり手の新羅のユシン将軍。そして国を守ろうと勝ち目のない戦に挑んでいく百済のケべク将軍。どちらも魅力的な人物。
この二人が最後どうなってしまうのか?

物凄く無名な作品ですがぜひとも見て欲しい作品です!
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