ラストファイト。
それは心たぎらせるものではなく、悲しみの集積というべきものであった。爽快感はない。トミーガンの悲しみと、ロッキーの悲しみ。さながらその2つが成仏するための葬儀場であった。
ロッキーシリーズの何がいいかって、人間ドラマがしっかりしているところだ。ボクシングのシーンはたしかに心に直接有無を言わさず響くものがあるが、それは闘いに至るまでのドラマの結果だ。決して添え物じゃない。
そういう意味で、今作は完全に主従関係が逆転したものであり、物議をかもすのも無理はない。
だがそれ故に自分にとっては1と肩を並べるくらい心に響いた作品となった。
今作で特に印象的なのは、かつてないほどの激情を見せ、全力でロッキーを守ろうとするエイドリアン。
シリーズ全作を通して言えるのだが、どんなにロッキーが惑う事があっても、エイドリアンとの間の愛情だけは揺らぐことがない。そこがたまらなく愛おしい。