つかれぐま

突撃のつかれぐまのレビュー・感想・評価

突撃(1957年製作の映画)
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【これは「反戦映画」か?】

むしろ「戦争という巨大システムを、不確実な存在である人間が扱うこと」の危うさ。それを冷徹に描く反「人間」映画という後味。キューブリック「神の語り口」が本作から始まる。

塹壕戦から始まる戦場のカメラワークには、後年巨匠となる才能の萌芽が見られる。絶えず鳴り続く爆発音と共に凄まじい臨場感だが、この前半はキューブリックというよりも、主演兼製作総指揮のカーク・ダグラスの映画。彼の雄姿(キューブリック作品らしからぬヒロイックな描写)を見ていると、製作現場の実権の半分はダグラスにあったのでは?と思わせる。

後半のダグラスは中身の薄い「狂言廻し」的役割にまわり、上官たちと部下たちの人間臭さ(悪い意味で)が浮き上がる。ここからがキューブリックの真骨頂で、上官の狡猾さと部下の無知無教養ぶりが平行して描かれていく。

個人的に残念なのは、ラストの甘さ。
囚われたドイツ娘を好奇の眼で見るフランス兵の野卑。ここで終わって欲しかった。その後の歌はキューブリックの本意だったのか?想像するに(反戦映画を作りたい)ダグラスたちの意見で付加されたカットかもしれない。

キューブリックは、その後の戦争作品『博士の異常な愛情』『フルメタルジャケット』を、いずれも「希望ある歌」のシニカルな使い方で終わらせている。そういう後年から考えても、本作の甘い着地が本意とは考えにくい。本作のそれが不本意だったからこそ、前述の2作品で強烈なリベンジを果たしたのだろう。