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ソール・バスの映画タイトル集の継のレビュー・感想・評価

4.0
【タイトルバック】映画の題名・配役・制作スタッフなどの文字の背景として映る画面・映像のこと。

映写技師の判断で省かれる事もあったという、名前の羅列だけだったタイトルバックの歴史を、本編と同様に作品の一部として、又は独立した作品として楽しんでもらえるように変革したのがソール・バスです。

本作は、写真↑のソフト『ソール・バスの世界』に収録されたもので、バス本人がカメラに対面して自作から10作品を紹介、そのメイキングや製作意図を解説していきます。('77年製/34分)

「アラバマ物語」のスティーブン・フランクフルトと共に、カイル・クーパー(セブン)やガーソン・ユー(ウォッチメン)等、現役バリバリのデザイナーに大きな影響を与えたタイトルバックデザインのパイオニアであり、オリジネーターであるバス。

先駆けとなった「黄金の腕」のリール缶には “タイトルが出る前に必ず幕を上げておくこと!” と注意書きのメモが貼られていたそうで、こんな所にもタイトルバックの歴史がバス以前と以後で分けられる事を垣間見れます。

スタッフ・キャスト名等のクレジットの分量や読み易さを考慮に入れた上で音楽と連動させるアニメーションや実写の数々。
限られた時間の中で雰囲気を盛り上げるだけでなく、
「序章」として本編へスムーズに繋ぐ役割さえタイトルバックは担えると、その可能性を大きく広げてみせたのは現在へ続く大きな功績です。

「セブン」のコメンタリーを聴くと、バスが築いた常識をフィンチャーが率先してぶち壊し(クレジットを手書きにしてブルブル揺らす)てクーパーの背中を押してるのが分かります。
物凄く精巧な絵コンテなんて、クーパーが楽しんで描いてるのが一目瞭然。
プレミンジャーやヒッチコックとの仕事で創造の翼を思い切り羽ばたかせたバスと似ているなと思いました。

サイコ、めまい、エイリアン、グッドフェローズ等々、収録が叶わなかったのは権利関係?大人の事情でしょうか?(# ̄З ̄)
本作のスコアの減点はこのためですが、

バスが出演~製作に携わったもう1つの作品「なぜ人間は創造するか」を組み合わせたソフトは、現状で出来うる限りを尽くした作りになっていたと思います。
丁寧なテキスト(by 小柳 帝氏,『ぼくの伯父さんの休暇』のレビューで紹介したノベライズの翻訳兼出版者)と、フィルモグラフィ、本来のデザイナーとしての企業CIの仕事まで紹介したブックレットはとても充実していて読み応えのあるものでした。

晩年は仕事に恵まれなかったというバス。
テキストには、リドリー・スコット(エイリアン)やスコセッシという、バスの作品を観て育った世代の監督達が、敬愛の意を込めて有終の美を飾らせるべく仕事を共にしたとありました。
それは、連関して受け継がれていく 美しいエンドロールにも思えます。
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