森鴎外の文学を世界のミゾグチが映画化。母、田中絹代と生き別れた兄妹の悲しい運命をこの監督独特のリアリティで描き切った作品。
宮川一夫のカメラは流石に圧巻。原作の設定を大幅に改変してる為、ちょっとばかり違和感を感じる箇所も無くはないが、全体的にスケールの大きい悲劇として飽きることなく観れる名編となった。
全体的に重厚感・シリアスに徹している為、如何にも「ゲージュツ!ゲージュツ!」してる感じが溝口健二らしい。同じく世界的に評価の高い黒澤明とは大違いで、映像のフォルムを最優先している辺りが何よりの特徴。このような見た目=スタイル重視の演出が本国よりもフランスで受けるのはよく理解できる。冷淡で愛想が無く、良い意味でクールな演出である。
そういう意味で溝口健二は平成に於ける北野武みたいなものかな?と、興味深い。たしかに画面は壮麗だが中身は割と保守的なので、インパクトに欠ける作りではある。