ヒロ

山椒大夫のヒロのレビュー・感想・評価

山椒大夫(1954年製作の映画)
3.7
陸奥国の掾の家に生まれた厨子王と安寿の兄妹。父である平正氏の上役への謀反により逃亡を余儀なくされるが、途中で人攫いに襲われ母は佐渡で遊女に、兄妹は丹後で奴隷にそれぞれが生き別れる。様々な身分を渡り歩くなかで“人は慈悲の心を持たねばならん 己を責めても人には情けをかけよ”という父の教えを守り生き抜く姿を描いた森鴎外原作の文芸作品。

美術と移動撮影の掛け算が生み出す美しい画。
特に水の映し方がヤバイ。
画面の両脇から覆い被さるように生える笹の葉のアーチ、そのアーチに囲まれすっぽりと中央に空いた湖の入り口はまるで黄泉の国。そして1カットを挟み戻ると、均等な距離を保つ波紋と水泡、湖面に反射した薄霧がかった雲が映っている。
ブレッソンの『少女ムシェット』はまんまこのシーンの引用。他にもゴダールが『気狂いピエロ』のラストシーンを引用している。
真似したくなる気持ちは大いに分かるがオリジナルには全く敵わない。

2017-
ヒロ

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