ミミック

山椒大夫のミミックのレビュー・感想・評価

山椒大夫(1954年製作の映画)
3.7
引き裂かれた母子の残酷な運命を中心に、奴隷差別、菩薩信仰、命の尊さなどを描いた森鴎外原作の映画化。売られた先の大地主が山椒太夫、つまり悪役がタイトルとなってる。姉弟にスポットを当てたアニメ映画「安寿と厨子王」を予め見たので話はスムーズに入る。映画では兄妹に変えている。

庭園の石のショットから始まる。笛の音色が効果的に悲劇性を引き立てる。全部がロケに感じるほどセットの作り込みと編集が凄い。終盤の奴隷解放の開放感を感じる横スクロール、そしてラストの海辺でのじっくり見せるカメラワークは両者の想いがダイレクトに伝わる心震える名シーンとなった。

若い厨子王役の津川雅彦が幼くて可愛い。山椒太夫が焼きを入れる描写の直接見せなくても伝わる残酷さ。衣装とかセットとかカメラアングルとか作り込みがとにかく緻密だから、役者の叫び声に凄くリアリティがある。唄を聞いて母の生存と場所を知る姉の心境を長回しで魅せる。無縁な人の亡骸を山に捨てる風習が興味深い。妹の入水場面が日本らしさを映像で感じられる一番好きなシーン。遊女たちが皆生き生きとしてる。田中絹代の、にっぽんのお母さん感が強い。水の真ん中にいる妹の背中をとらえたジャケット写真を見るだけで涙が浮かぶ。
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