続けてアキ・カウリスマキ監督作品。
コチラはジャン=ピエール・レオを主役に据えたフランス風味のブラックユーモア・コメディ。更にはちょっとノワールな雰囲気も?
職場を解雇された男アンリは人生を悲観し自殺を試みるが失敗し、プロの殺し屋に自分を殺すよう依頼するが…
労働者階級の不条理をベースに、嫌味のないユーモアを交え展開して行く。それにしても悲哀に満ちたジャン=ピエール・レオの静かな演技が素晴らしい。… でも笑える。
細眉に派手なアイシャドウ、真っ赤な口紅に原色使いの洋服たち。恋のお相手、花売りのマーガレットの強烈な個性に吸い込まれる。とりわけトーンを落としたブルーグレーの空間に浮かび上がる真っ赤なガウンをはじめ、色彩のコントラストにいちいち唸る。
台詞は極端に少ない。されどそのぶん一言の味わいはとても深い。不思議なスリリング展開と音楽チョイス、完璧な構図に陰影… と撮影も痺れるくらいお洒落。
底辺で喘ぐ労働者階級に優しく寄り添い、可笑しみすらもたせ、希望と言う余韻の残しかたに至るまで、監督のバランス感覚と手腕をビシビシ感じるところ。
カウリスマキ監督が偏愛する人達が集結し脇を固めているのも見どころらしく、登場する全てのキャラが(殺し屋までも)みんな愛おしくて愛着が湧く。
レビューしながらどんどんスコアが上がる好みの作品だった。
あと、監督自身のカメオ出演シーンはしっかり観直した。笑