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コントラクト・キラーのKのレビュー・感想・評価

コントラクト・キラー(1990年製作の映画)
4.8
形容できない、新しい感情が込み上げる。

自殺に失敗した男が、殺し屋に自分自身を殺害することを依頼する。けれども恋に落ちて死ぬのが怖くなり、雇った殺し屋から逃げ回ることに。

淡々としてて笑いを含んでいるけれど、物悲しさが根底にある。

首を吊ろうと一歩ずつゆっくり梯子を昇るシーンは、寂しさに包まれる。そこから暗転し、失敗した音が聞こえる。さらに哀しさが襲ってくる。

「自分でやれば金はかからない」と言われるが、「僕は臆病者だ」と返す。「人生は美しいぞ、神の賜ったものだ。美しい花を見ろよ、動物に、鳥たち。この美しいグラスが死を望んでるか?」と殺し屋に説得されるのも面白い。

「なぜフランスを出たか」と聞かれ、「みんなに嫌われたから」と答える。事実と感情が混ざった返答に心を打たれた。

人は何度も死にたくなる。そして、失意の中にいる時に限って、美しいものに出会ってしまう。突然、ハンバーガーショップでバイトしてることもある。そんな物語だ。

もう、ぜんぶ、わかるよ。君の感じてることも、言ってることも、やってることも、ぜんぶ、わかるよ。そう言って彼を抱きしめたい。
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