次男

コントラクト・キラーの次男のレビュー・感想・評価

コントラクト・キラー(1990年製作の映画)
4.2
「仕事も閑職・プライベートも無味の淡々と生きてる男が、仕事もクビになって、友達もいなくて、あーあもう死んじゃおっかなあ、なんて思い至ったものの、自殺は失敗するしそういえば俺臆病だからそもそも自殺できねーし、最近殺し屋流行ってるみたいだからそうだ金払って殺し屋に頼んで自分を殺してもーらおっつって雇っちゃって、殺し屋来訪を首を長くして待ってたら、殺される前に偶然出会った花売りの女に惚れちゃって、やっぱ死にたくねえ、自分が依頼した殺し屋から逃げなきゃ」って話。

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舞台がイギリスだろうが主人公がフランス人だろうがサスペンス風味だろうが、もう純然たる、親愛なるカウリスマキ感。アヴァンタイトルの実景からもう虜(カウリスマキの実景は本当にグッとくるのだ)、男の生き様を表す冒頭5分だけで、カウリスマキの世界に没入できてしまう。

毎度毎度、「なんでこんなテンションの映画(失礼)がこんなにシビレるんや」って不思議で仕方ないのだけど、いやいや、むしろこんな独り言みたいなテンションだから素直に聞けるのかもなあ。暑苦しく押し付けがましく・口角泡を飛ばして熱弁されると、天邪鬼発揮しちゃうもんな。

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「生きたい」と思おうが「死にたい」って思おうが、世界に愛されていようがいまいが、「生きてる意味」があろうがなかろうが、なんせ、とりあえず、現状僕は生きてる。数秒先も生きてる保証はないけど、そう考えた時点では生きてる。この、「生きてる」ってことが、なんだろ、唯一にして確固たるエビデンスなんかもなあ。

生きてる意味なんてない、かもしらんけどとりあえず今僕は生きてる。辛い死にたい、けどとりあえず今僕は生きてる。世界は俺を愛してない、かもしらんけどとりあえず今僕は生きてる。とりあえず僕は、今生きてんすよ。
次男

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