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コントラクト・キラーのろのレビュー・感想・評価

コントラクト・キラー(1990年製作の映画)
5.0

一昨日はアニエスヴァルダの映画を観に行ったのですが、
予想外のことが起こり、
驚きと動揺から頭がぼーっと。

カフェでお茶しても、
雑貨を見て歩いても、
母に話しても気分が晴れず。

もう死んでしまいたいと、涙がホロリ。

でもどうせなら、映画の一本でも観てから死のう!と思い、
電車に揺られてDVDを借りに行きました。


大好きだったフィルマークスユーザーさんがよく観ていた、アキカウリスマキ。
初鑑賞ですが、どことなく小津さんやチャップリンを思い出す作風で、とても懐かしい気持ちになりました。


主人公アンリは ある日会社をクビになる。
15年間勤めた会社がくれたのは、安物の金時計一つ。
アンリは自殺を試みる。
首吊りやガス自殺。
でもなかなか上手くいかない。
そんな時、新聞の見出しが目に留まる。
「コントラクトキラー、麻薬戦争で暗躍」
アンリは”これだ…!”と目を輝かせる。
そして、自分を殺してもらうために、殺し屋を雇う。


今まで生きていながら死んでいるような、
味気ない生活を送っていたアンリ。
そんな彼の前に一人の女性が現れる。
アンリは一目で恋に落ちる。
その一瞬間で世界がパッと鮮やかに煌めいた。

自分が雇った殺し屋から逃げる、滑稽さと恐ろしさ。
交流を通して触れる、人の温かさ。
ささやかな幸せ。

「それで?まだ死にたいの?」
「いいや、もう、死にたくない」


死にたくてたまらなかったはずなのに、
無我夢中で逃げるアンリ。

余命1ヶ月と宣告され、
娘の背中を愛おしそうに見つめる殺し屋。

この二人が向かい合う場面、サイコーにカッコよくて、生き様が素晴らしくて、涙が出た。



夜明けの空の、深い青に、街灯の灯りが点々と。
澄んだ空気が目に沁みる。
ろ