TAK44マグナム

ナイト・オブ・ザ・コメットのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

3.6
地球全滅。
だけど楽しく生きなくちゃ♪


80年代の良い意味での緩さがつまったSF終末ホラー。
主演はキャサリン・メアリー・スチュワート。
実にアメリカ的な美人さん。
「スターファイター」でもヒロイン役でしたね。
そんなキャサリン・メアリー・スチュアート演じるレジーナが、ケリー・マロニー演じる妹サマンサと共に、生き物が死滅した終末世界で逞しく生きていきます。
時にはゾンビと化した生き残りとMAC-10を撃ちまくって戦ったり、シンディ・ローパーの「ハイスクールはダンステリア」(←カヴァーバージョンらしいです)をBGMに、デパートで「お金を払わなくていい買い物」をしまくったり。
因みに、MAC-10とはイングラム製の小型サブマシンガンで映画でよく使われます。
「ニューヨーク1997」や「コマンドー」でも使用されていました。


6500万年ぶりに地球に接近する彗星。
世紀の天体ショーを一目見ようと世界中の人々が見物していたら、彗星の光によって皆ーんな赤い塵になってしまいます。
動物たちも漏れなく塵となり、映画館の映写室で彼氏と過ごしていたレジーナが外へ出ると静かすぎる世界の異様さにビックリ仰天。
寝ている間に地球生命の殆どが絶滅していたのです!
とりあえず妹サマンサも倉庫にいたので無事でした。
彼氏はゾンビに殺されちゃったけど気にしない。
まずは放送が続いているラジオ局へ行ってみますが、放送は録音でした。
そこには、やはり生き残っていたトラックの運ちゃんであるヘクターがいました。
レジーナはヘクターと良い感じになりますが、それを快く思わないサマンサ。
ヘクターは家族の無事を確認するために、必ず戻ると約束して行ってしまいます。
残されたレジーナ達はデパートでの「お買い物」に夢中♪
ところが、そこには武装した男たちが潜んでいて・・・


これ、一応ジャンルはホラーだと思うのですが全然怖くありません。
みんな服を残して塵になってしまうので街は無人。
ゾンビも数えるほどしか出てこないのです。
しかも厳つい特殊メイクしているだけで、何なら喋るし。
いわゆるゾンビって感じじゃないんですね。
子供ゾンビぐらいかな?
ちゃんとホラーしていたのは。
何でもそうですけれど、子供ってものは純粋で可愛いという前提があるので、醜悪で凶暴だったりするとショック度が倍加します。
ホラーにおいては使い勝手の良い最終兵器みたいなものですね。
ちなみに、最初に出てくる鈍器ゾンビはロメロのパクリらしいです。

そんなゾンビよりも、事態を事前に予測していて地下施設に逃げていた研究者たちの方がイカれてます。
そもそも、事態を予測していたら何で警鐘しなかったのでしょうか?
キチンとした政府の研究機関ぽかったから、政府からの命令ってことで彗星の光を浴びないように勧告できたはず。
政府自体も滅んでしまったわけで、この人たち全く仕事してないですよね(汗)
ただただ自分たちが生き残りたいが為に地下へ逃げて、それでも塵になりそうだとなると生き残りを捕まえてきては血を抜きまくって血清を作ろうとする。
心底、自分の事しか考えてない連中で、だからバチがあたるわけですが・・・。


本作は、独特のビジュアルセンスも捨てがたい魅力をはなっています。
焼けたフィルムのように赤く染まった空。
まるで人類の墓標のようにそびえ立つ高層ビル群。
広い道路にポツンと、レジーナとサマンサ。
まるでアートです。
そのままポスターにして飾ったらオシャレだろうなぁ。


世界が滅んだというのにどこまでも明るく能天気なラストが、逆に物悲しさも感じさせて秀逸。
破茶滅茶にポップで、終末論が語られながらも希望に満ちていたあの頃だからこその不思議な雰囲気で彩られた、まさしく80年代の空気を具現化した作品といえるでしょう。

悪意に満ちた世界にさよならを。
愛に満ちた世界よ、こんにちは。


セル・ブルーレイにて