カルダモン

地球最後の男のカルダモンのレビュー・感想・評価

地球最後の男(1964年製作の映画)
4.0
1968年。伝染病の蔓延によって全人類は吸血鬼と化している。唯一生き残った男ロバートは他にも生存者を探すために毎日しらみ潰しに街を調べて回り、生活に必要なガソリン、食料の調達に加えて、夜な夜な襲いかかってくる吸血鬼を撃退するためにニンニクや鏡や武器を補充する。

終末観漂う寂しい雰囲気と、どこからともなく湧いてくるゾンビのような吸血鬼たち。『ナイトオブザリビングデッド 』が生まれるきっかけにもなった本作は、怪奇的な物語が次第に人種問題あるいは分断の話にスライドしていき、やがては虚しい結末を迎える。

協会に逃げ込んだ主人公が取り囲まれる場面は、タイムリーに議事堂に乗り込んだトランプ支持者の様子と重なってしまった。あの事件の映像を見て心底震えたのは、同じ国民であるはずの人々の間に言葉がまるで通じない状態であったり、最初から聞く耳を持たない状態だった。集団心理とそこから引き起こされる歯止めのなさに絶望する。


冒頭のシーンが美しい。
死んだ街に転がる死んだ人。