ジーナ

愛は死より冷酷のジーナのレビュー・感想・評価

愛は死より冷酷(1969年製作の映画)
3.9
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の長編デビュー作。
白を基調とした静寂な傑作ギャング映画。

一匹狼のギャングであるフランツ(演:ファスビンダー)は、とあるシンジゲートに捕らえられ、組織に入ることを要求される。
しかし、それを拒み続け解放されたフランツは、その場で出会ったブルーノ(ウリ・ロメル)と手を組む事になる。

フランツにはヨアンナ(ハンナ・シグラ)という娼婦として働く恋人がおり、そこへブルーノが加わって女1人、男2人による共同生活が始まる。
3人は銀行強盗を企て、次第にフランツとブルーノは固い友情で結ばれるが、それはいつしか愛に近い関係を匂わせ、ヨアンナはいい気がしない。
そして、銀行強盗決行の日が訪れるが・・・。

いやぁ、素晴らしい映画でした。
この三角関係が織りなす、奇妙な雰囲気が見所。
ファスビンダーとウリ・ロメルのほんのり仄めかすゲイセクシャルな関係が魅力。
実際にファスビンダーはバイ・セクシャルですし、彼らの作品のほぼ全てに同性愛者が出てくるのですが、デビュー作から早速やるとは流石だ。
そして、ハンナ・シグラがとにかく美しい。

本作は超低予算が故に派手な演出はない。
しかし、それを逆手に取った手法がとても実験的で、固定カメラの前で淡々と繰り広げられる演劇チックなアクションや意図的な棒読みが特徴。
狭くて真っ白な部屋を登場人物が右往左往するだけのシーンは閉塞感を最大限に表現できたように思う。

銃撃シーンには血も出ないし、服も破れないし、撃たれた方は時代劇で見るようなわざとらしい死に方もする。
けど、そこは数多くの戯曲を手掛けたファスビンダーならではと映画理論が詰め込まれていて、他の作品や経歴を知れば知るほど好きになれる。
そして癖になる。

ハンナ・シグラやウリ・ロメルに加えてイルム・へルマン、イングリット・カーフェン、クルト・ラープ、ハンス・ヒルシミュラーなど、ファスビンダー映画の常連がこの時点で多く居るのもファンには堪らない。

ハリウッド的な壮大なギャング映画に慣れた人には合わないかもしれませんが、僕はこういうのも大好き。
続編として「悪の神々」も作られています。

特に好きなシーンはサングラスを万引きするシーンとスーパーマーケットでの長回し。
堂々と万引きしてて笑えるw

ファスビンダー作品の中でトップクラスに好きです。
ジーナ

ジーナ