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ザ・センダー/恐怖の幻想人間のhorahukiのレビュー・感想・評価

3.4
意識を失ったり情緒不安定になったりすると、周りに自分の感情を悪夢として伝染させて幻想を見せるという奇怪な能力を持った青年を描いたサイキックホラー。

あらすじ…
入水自殺を図った青年(センダー)が運ばれた病院で精神科の医師をしてる主人公。センダーは全く記憶がなく、彼が入院してから主人公の周りで不可解な現象が起こり始める。突然怪奇現象が起こり始めたかと思うと、しばらくしたら元どおりに戻っているということが頻発し、センダーに何か関係があるのではと疑う主人公だったが…。

面白いしアイデアも好みなんですけど、イマイチ活かせてないのが残念な作品でした。入院患者が超能力者で、院内で騒動が起こったり、超能力に母親が少なからず関わっているという点がオーストラリアのツバ吐き映画『パトリック』と似ていますが、あちらは能力を制御出来てたのに対し、本作は無意識化で発動するので、物語の印象が大きく異なります。自分の好きなように危険な能力を使えるパトリックに対しては恐怖心を抱きますが、制御できない上に能力自体は無害なセンダーに対しては同情だったり、なんとかしてあげたいという気持ちの方が強くなる。

そういったところが本作のテーマに繋がっているというのが上手い。放って置けないセンダーにまるで実子に接するように惹かれていく主人公が描かれていて、センダーを溺愛し束縛する実の母親と、センダーを心配し自立させたいと願う主人公が対立していくことで、センダーをかけた実母vs主人公の母性対決にも見えてくるところが面白いです。

センダーの能力描写もなかなか凝っていて、突然ヒビが入って血がドロドロ流れ出す鏡だったり、戦場に突然ワープしたり、周りの人間が急に宙に浮いたり吹っ飛ばされたりと阿鼻叫喚なシーンもあってビジュアル的にもなかなか良いです。まあ全部夢オチなんだけど(^_^;)そんな感じで全部幻想だから周りの人間に実害はないけど、こんなもん毎日見せられてたら気が狂いそう(笑)

センダーの能力は母親の溺愛しすぎな育児方針による反発的なもので、母親や現状に対して何もできないセンダーの無力感を「幻想」という彼の能力をもって表すとともに、自分では制御できないという能力の性質により決して抜け出せない母親の呪縛をも表現してる…はずなんですが、描写が薄すぎてイマイチピンとこないのが凄く残念。

とはいえ、雰囲気良しBGM良しで内容もなかなか面白いので、見て損はない作品かと。サイキック系が好きな方には是非オススメ!
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