むっしゅたいやき

白い酋長のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

白い酋長(1951年製作の映画)
4.0
カビリアの存在感。
フェデリコ・フェリーニ。
フェリーニの初単独クレジット作にして、ローマを訪れた新婚夫婦に起こる価値観の相違と修復を描いたコメディである。

久し振りのフェリーニである。
彼特有の白黒乍らヌケが良く、明るく開放的なショットは矢張り見応えがある。
物語は一本筋物で大雑把な面も見られるが、テンポも良く、また尺も短いので飽きずに見られる。
夫役のレオポルド・トリエステの顔芸を交えた名演が光りはするが、本作をより一層私にとって馴染み深いものにしているのが、娼婦カビリアの登場である。
後に傑作『カビリアの夜』で描かれる、明るく人間味溢れるこの女性の本作への登場は、一見本筋とは何の関連も見出す事が出来ないものの、可憐で慎ましやか、空想の世界に遊ぶ妻役ブルネッラ・ボーヴォとの世界観の相違を対比させ、また本作を世俗的でより現実的に感じさせる事に成功させている。
フェリーニがたった一シークエンスの登場ながら作品全体へ影響を及ぼしたこのキャラクターへ後年焦点を当てたのも、極めて自然であったかと思われる。
彼の中では、所謂トリックスターの位置付けであったのであろうか。

本作は仲を修繕した新婚夫婦の微笑ましい描写で終わる。
劇中人物達がカビリアの登場で一旦現実世界へ降りて来て、また劇中へと帰って行った─。
そんな一抹の寂しさを持たされた作品である。
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