ShojiIkura

学校IIのShojiIkuraのレビュー・感想・評価

学校II(1996年製作の映画)
3.6
 今作は養護学校(現在は特別支援学校)高等部が舞台。かつて教育実習を行い、今も児童福祉の仕事柄現場を目にする僕にとって、教室の様子はかなりリアル。クラスメイト一人一人が「養護学校あるある」のキャラクター。キャストの様子を見ると、中には本当にハンデを持った方もいるのかな?
 そんな中、佑矢という百戦錬磨の先生方も頭を抱える問題児がいるわけだが、これまたこうした学校ではさほど珍しくないのが事実。こういう子の存在が、障碍者と精神疾患者との境を曖昧にして、世間から何をするかわからないと怖い目で見られてしまう要因になっていると思う。
 ただし、現場を知る僕から見ると、やはりいくつかはこれは違うだろうだったり、ご都合主義な脚本と思うところはある。特に佑矢が突然高志を兄と慕い、高志・佑矢共に症状が改善されていくという奇跡は、実際にはほぼないと思うし、あるとしたら高志・佑矢それぞれに過去の何かが要因とするべきだと思うが、全くその事に触れていない。
 そもそも全寮制の養護学校というものがあるのか疑問に思ったので調べたら、公立・私立共に極めて少数ながらあるということを知った。また、児童障害児施設からの通学ということなら珍しい話ではなくなってくる。
 いずれにせよ実話が元の映画でないのならフィクションとなる部分があることを理解しているが、教室の様子がとても良かったので、世間に障碍者教育という現場を知ってもらうという目的からもリアルさにこだわりを求めてしまう。制御不能の佑矢に思わず怒鳴ってしまう小林先生を見て、あの時代だしまあ良く殴らなかったな、と世間の人は思ってしまうだろうけど、障害者教育の現場では力で押さえつける無意味さをとっくに認識しているはずなので、現場レベルだと小林先生はすでにアウトだと思う。また、小林先生が本当は普通校を、目指していてたまたまここに赴任したという話も、公立小・中学校内にある特別支援教室ならともかく、その上のレベルにある特別支援学校は希望を曲げて赴任させるシステムはないと思う。
 ぼやいてばかりになったが、こんな大変な子が社会に出ることを目指す養護学校を学校シリーズに加えてもらったことにはとても感謝している。卒業するにあたっての作文の場面で、緘黙から脱した高志がいる一方で、卒業まで一言も話さなかった生徒もいる(高志のような奇跡が起きなかったある意味リアルな子)という見逃してしまいがちな細かい部分こそ、僕としてはこういうことを含めたそれぞれのペースに合わせた寛容主義の素晴らしさとして世間に伝えたい。(あの校長先生の寛容さが象徴してます)
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