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シルバー・サドル 新・復讐の用心棒のhorahukiのレビュー・感想・評価

3.9
Silver saddle shining in the sun…

ルチオフルチ監督によるマカロニウェスタン。幼い頃に父親の仇を銃殺した主人公ロイは、皆に恐れられる孤高のガンマンに成長。依頼遂行の際に偶然助けた10歳の少年にかつての自分を見たロイは、少年を狙う陰謀に相棒のスネークとともに立ち向かう!

フルチによるウェスタンの最終作。フルチ特有の残虐さは其処彼処に散りばめられてはいるものの、ゴアはなく、主演兼プロデューサーのジュリアーノジェンマの目指したファミリー向けウェスタンとなっている。10歳のころ、突発的に父親の仇を銃殺したことで失ってしまった子どもらしさや人間性を、かつての自身と同じ道を歩もうとしている10歳の少年を間違った道から救うことで再獲得するハートフルストーリー。

道の向こう側からやって来る親子の遠景のショットから始まり、違いを強調した反復で幕を閉じるプロローグの時点でフルチのセンスが感じ取れる。カメラのパンの始点と終点を繋ぐ情報の意図的な取捨選択と強調、少年から抜け落ちていく(離れていく、孤立していく)ことを語る引きの虚無感と周囲との距離、そしてタイトルになっている『シルバーサドル』が抜け落ちたものの代わりに何をその場で手に入れたのかを明確にするため、プロローグ明けのかけ離れたロイのイメージに何の違和感もなく馴染んでいける。

『ザ・サイキック』後の作品だからか、銃撃戦そのものよりもそこに至る過程の不穏さに長けている作品のように感じた。特に序盤、酒場での一触即発シークエンスは本作でも屈指だと思う。カメラの始点から主人公を追いつつも、主体を後追いでカメラ内に収め、奥と手前で主観化させピント移動により「会話」を行う。それだけではなく、チラッと映るシークエンスに関係のない第三者にもピントが合っているのがずば抜けて良くて、フルチのセンスが冴え渡ってる。しかも、これと瓜二つなシークエンスをクライマックス付近にも挿入する、物語の構造的にも同様の意図を持ったところで反復しているから、物凄く練られているのがわかる。ほんとこの頃のフルチ凄いよね!

ロイが少年を守る物語でありながら、少年も物凄く優秀で、どんな悪党にも怯むことなく立ち向かうのがカッコいいし可愛い!ほんと良い子過ぎて、見てるだけで癒されるから、子ども映画好きとしてはこの時点で高スコア確定だった😂途中で娼館に立ち寄るんだけど、そこで味方の娼婦のお姉さんたちが優しくしてくれるもんだから、「僕のお姉ちゃんに言ってこの建物ごと買ってもらう!そしたら毎日来れるもん!」とか言ってるピュアな感じが特に堪んなかった🤣ちなみにこの子の家はめちゃくちゃ金持ち!

少年に対して発する「神父の言うことを聞けよ」という言葉に現れているように、亡くした父親の影から抜けられないロイがずっと追い求めてきた敵は、結局自身の内面の具現化でしかなかったわけで、そこに決着をつけることで『シルバーサドル』の象徴性を転換させ、自身と少年を救うという展開はほっこりしてサイコーだった!
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