逃れられない幻影の盾に対峙する精神構造の歪みに人間は、夢幻泡影に塗れながら真の姿を蒙ることはできるか。
この世の不思議か自分の事を最も知っているのは自分自身なはずなのに、自分の思考が何処か遥か遠い異空間に置かれていると感じる事がある。
精神と肉体は同一ではない。
目の前に現れたもうひとりの自分は遠くから現実の自分を眺め、何かを言いたそうに少しずつ距離を縮め近づいてくる。
その幻影を生み出した張本人こそ自分自身の中に眠る潜在意識だとしても、悩み苦しみ狂気に苛まれながら過去に怯え幻影に取り憑かれる。
もし仮に精神と肉体が一瞬でも一致したなら、それは理想が現実になった瞬間かも知れない。
本作はミステリアスなサスペンス調に描いているが〈アルトマネスク〉と言われている通り〝ロバート・アルトマン〟の、既存の概念に囚われない自由な表現手法で各映画ジャンルの根本的原理の破壊と様々な風刺を背景が垣間見れる本作。
主演〝スザンナ・ヨーク〟自身の原作で脚本も手掛け、音楽は〝ジョン・ウィリアムズ〟と〝ツトム・ヤマシタ〟が担当しているが、禅美学者でもある〝ヤマシタ〟の前衛的影響が濃い。
美しい情景は大自然のしなやかさと力強さで非力な人間を大きな口で丸飲みし、構図やカット割りなど幻影の具現化と対峙する様は奇奇怪怪..★,