暴力と破滅の運び手

牛泥棒の暴力と破滅の運び手のレビュー・感想・評価

牛泥棒(1943年製作の映画)
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1885年ネバダ州。冬越しのあと訪れた町酒場に、牛飼いが殺されたという報せが入る。法の元での裁判をするべきだという町長(?)の意見を振り切って、町の男たちは私刑に掛けようと現場へ駆けつける。そこには3人の男が野営をしており、彼らは必死の哀願も虚しく多数決によって決定された首吊刑に処せられてしまう。しかし町へ帰ろうとする住民たちの元に、たまたま行きあった保安官が牛飼いがまだ生きていて真犯人が捕まえたと告げる。

『廃墟の群盗』がそうであったように、全編を通して荒涼たる暴力の雰囲気に満ちている。興奮すらなく、正義の元に行われる死は覆らない。フラナリー・オコナーみたいな寒々しさが現出していた。
まあ台詞はかったるかったけど。

フォードが光の人ならウェルマンは陰影の人という感じで、まあ『廃墟の群盗』にはちょっと負けるかなとは思うけど、みんな一斉にタバコをつけるところとかかっこよかったね。顔はちょっとやりすぎかなとは思うし、ヘンリー・フォンダの目が妙にキラキラしていて狂気の表現かと思ったら西部劇らしい美徳の体現者だった。