これを観るために『深夜の告白』を観た。そこは後半からどんどん逸脱しまくる。カサヴェテス本人が監督作品として認めてないだけあってヤケクソ感が無くもない。寧ろ信頼してる役者たちに楽しませて役者たちの力量で好きにやらせてる感じもあり、理屈無く畳みかける面白さはプレストン・スタージェスのスクリューボールコメディなどに回帰してるかも。
アラン・アーキン(イワシ酒吹くところでちょっと笑っちゃってる)が神経細すぎるゆえにキレると肝が据わりすぎて滅茶苦茶な行動に出る役柄で、その不安定さがだんだんいとおしく感じられてくる。狭い車の中でぶつぶつ独り言言ってて、ピーター・フォークとビバリー・ダンジェロが言い合ってて、ダンジェロの隣で拘束されて口も塞がれてるチャールズ・ダーニングがただ座ってる。そのショットだけでなんだか可笑しくなってくる。
ピーター・フォークが詐欺師感満々でアーキンを翻弄しまくり、ハゲヅラかぶったり白塗りしたりとやりたい放題で貫くのかと思いきや、だんだん不安定すぎるアーキンの保護者みたいになってくるのが好い。関係性の中で変化してくのをちゃんと入れてて好い。
ビバリー・ダンジェロは80年代らしい安っぽいセクシーな衣装を次々変えていく。喪服の黒いベールごしのショットが美しかった。『深夜の告白』でエドワード・G・ロビンソンのやった役をチャールズ・ダーニングがやってるのは私得。ダーニングも活躍しててうれしい。
とはいえ黒沢清をして再評価されたという本作、その箔がなければやはり観てなかったかもしれない…