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聖者の眠る街の4423のレビュー・感想・評価

聖者の眠る街(1993年製作の映画)
4.0
フィルムが入っていないカメラで青年は一体何を捉えるのか。

本作はニューヨークに生きるホームレスたちの姿を映し出した作品であるが、普段映画などではあまり見ることの出来ないニューヨークの裏側を描いた作品とも言えるかもしれない。

精神を病んだ青年マシューを演じるのはマット・ディロン。役名が本名であるマシューというのはなかなか感慨深く、マシューの危うさ、脆さ、不安定さを全身で演じきっている。

そして新米ホームレスのマシューにホームレスとして生き抜くためのアドバイスをくれる黒人のジェリー。マシューとジェリーは人種の壁をも越えて次第に擬似親子のような関係になっていく。ダニー・グローヴァーはどうしてこうも人情味溢れるお父つぁん役が似合うのか。その優しさがかえって痛々しく感じることさえあるというのに。

ホームレスの中にも序列が存在し、弱者はひっそりと道端のゴミのように死んでいく。ラストは明らかな皮肉と絶望を見せつけてくれるが、地味ながらも競争社会が生んだ闇を鋭く切り取った佳作である。聖者が眠る街というタイトルもとても印象的。
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