もなみ

裏切りのサーカスのもなみのレビュー・感想・評価

裏切りのサーカス(2011年製作の映画)
3.0
ベネディクト・カンバーバッチとトム・ハーディが頑張っていて良かった。

原作ファンで、いそいそと劇場に駆けつけた身としては、スマイリー役とビル・ヘイドン役はミスキャストと言わざるを得ない。
なんなら、この二人の配役は入れ換えた方がまだしっくりくる。

ジムと少年の交流とか。実はスマイリーを深く愛しつつも遊びの関係の男の正体に気が付き、混乱しつつも自分勝手に周囲を振り回すのがやめられないアンと、彼女を愛してしまったことが唯一の弱点であるスマイリーの関係とか。
それらの人間関係が原作のキモだと思っていたのに、原作を再構築しすぎだったのでは。

おっさんのスカッシュとか。
クラブのロッカールームのおっさんの裸とか。
カンバーバッチが危機に備えて身辺整理のため、泣く泣く男性の恋人と別れるのだが、機密に触れるため詳細を話せず、お互いに辛い別れになったとか。
カンバーバッチがトム・ハーディを殴ったりとか。
あげくのはてにスマイリーが服を脱いで池で泳ぐとか。

そんな男同士のムッハー要素は要らんから、スマイリーとカーラの対決をもっとじっくり描いて欲しかった。この対決は、アンとの関係がスマイリーにとってのアキレス腱であることを宿敵カーラに見破られ、後々、二重スパイの存在をスマイリーが見過ごす原因となる作品一番の要所であり、ゲイリー・オールドマンの独白であっさり済ませる内容ではない。

カーラはともかく、アンまでもが最後まで顔すら映らないという、刑事コロンボのカミさんレベルの扱い。

画素数高過ぎみたいなざらついてぼやけた画面が最後まで続いてメリハリ無さすぎ。

5年以上経つのにゲイリー・オールドマンで新たなスマイリー三部作が作られる気配が無いのは、やはり今作が消化不足だったからだと思う。

ちなみに私のスマイリーのイメージは、亡くなってしまったけれど、ドナルド・プレザンス。体型は譲れない。
ゲイリー・オールドマンも、チャーチル役の為にあそこまで太った特殊メイクができるなら、スマイリー役のためにも、もう少し太って見せて欲しかった。

ゲイリー・オールドマンは、どんなスマイリー像を演じるのかと思ったら、いつものゲイリー・オールドマンといった感じで、スマイリーらしい重厚さを感じなかった。
原作のシチュエーションと地味で陰鬱な設定だけ借りて、別映画に作り替えたという趣だった。

原作者ジョン・ル・カレの持ち味のはずの最後のカタルシスも、ベネディクト・カンバーバッチやゲイリー・オールドマンの得意満面な笑みで終わるとは、話の種類が違ってしまっている。
がっかり。
もなみ

もなみ