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裏切りのサーカスのdenizのレビュー・感想・評価

裏切りのサーカス(2011年製作の映画)
4.1
「腐ったリンゴがひとつある。
それを見つけ出せ。」

1960年代、東西冷戦下を舞台とした緻密なスパイスリラー映画。イギリス諜報機関サーカスの中から裏切り者(二重スパイ)を炙り出せ…というのが主軸の展開。
豪華キャストながら、派手な演出は皆無。
何度も何度も見返す度に、隠された描写に気付かされ、小道具ひとつ、視線のひとつ、余白のひとつに至るまで理由があるのではと考察と妄想に耽りたくなる。
ゲイリー・オールドマンの上品な冷静さ、コリン・ファースの傲慢な色っぽさ、ベネディクト・カンバーバッチの若い誠実さ、マーク・ストロングの献身的な純情さ。
あのトム・ハーディが一番常識的なイケメンに見える不思議。
多様なキャラクターが相まって、サスペンスと並行して濃密な人間ドラマが繰り広げられている。
泥リッチな感情がひしめき合ってるにも関わらず、その一切が台詞として語られることはなく、情景としてのみ描かれているのがまた憎らしくも愛おしい。
苛烈な情報戦の裏には隠された各個人の歪んだ愛憎の情があり、そこに惹かれて自分は何度も観てしまうのであります。。

設定の複雑さ、登場人物の多さに、正直、初見時はほとんど理解出来なかった…汗
なので、是非騙されたと思って二回(以上)観て欲しい…(>_<)
本編の最後、フリオ・イグレシアスの「La Mer」が流れる頃には、言葉にし尽くせない感情が溢れ出てきている…はず。
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