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気狂いピエロの決闘のjamのレビュー・感想・評価

気狂いピエロの決闘(2010年製作の映画)
3.8
時期が時期だけに
ピエロの巻き起こす社会的な騒動…
ふと、"ジョーカー"を連想する


スペイン、マドリード
ハビエルは祖父、父も道化師という一家に育つ
いつしか自分も道化師として人を楽しませ、笑わせるようになりたいと思うのは自然なこと

戦争による父との別離を経て


ところが
成長したハビエルが務めているのは
"泣き虫ピエロ"
白塗りのメイクの目元には大粒の涙

道化師…クラウンが皆を喜ばせて楽しませる役割なのに対して
ピエロは、自分がひたすらおどけて皆に馬鹿にされ続ける役割


ハビエルが流れ着いたサーカス団には
人気道化師(踊りピエロ)のセルヒオが


セルヒオは問う

何故ピエロになる?
理由もないのにピエロになんかならないだろう?
生きるのが怖くて堪らないか、親もピエロかどちらかだろう?

人殺しにならないためさ…


刹那的な美しさをもつナタリア
サーカス団の曲芸師である彼女は
セルヒオから度重なるDVを受けながらも
彼から離れることが出来ずにいた

ナタリアに心を奪われたハビエルは
彼女をセルヒオから救おうとするものの…



追い込まれて、そうすることしか出来ずに
ハビエルの凶行がエスカレートしていく
映像はとてもシュールで
残酷なのに
目を離すことが出来ず

自らを(文字通り)傷付けて
リアルピエロになっていくさまに
彼の心の傷の深さとその奥の本質的な痛みを感じて


ハビエルによって怪異な顔貌へと変えられた
哀れなセルヒオ
もはや、クラウンとは言えない救いのないそのさま


ナタリアの選択は
逃れられない女の業の現れ


人々を巻き込んで闘うピエロとクラウン


争う人々と
頑張りが空回りする
バイク乗りのゴーストライダーの対比


ライダーが飛んだ空の鈍い色に
この世の無常を感じて



新宿武蔵野館
百周年記念上映
12月 スパイスはいかが にて
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