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座頭市血煙り街道のMASHのレビュー・感想・評価

座頭市血煙り街道(1967年製作の映画)
4.0
座頭市シリーズ第17作目。監督は三隅研次という時点で当たり確定なわけだが、その中でもこの監督らしさがよく出ている作品のように感じる。この作品以前の数作は市の人斬りとしての姿に言及したものが多かったが、今作では座頭市の映画のもう一つのテーマである人情を深く描き出しているのだ。

同監督の『血笑旅』と内容は結構被っている。母親を失った子供をひょんなことから父親の元に届けることになった座頭市。その道中で事件に巻き込まれることになるというプロットはほぼ同じ。だが『血笑旅』と雰囲気がまず違う。子供が赤ん坊ではなく5、6歳というのもあり、市と子供の交流がよりほのぼのと温かみのあるものになっている。市が子供に厳しく当たっている感じで、誰よりも優しくしているのがじ〜んと来てしまう。

そして何よりライバルである近衛十四郎の存在だ。従来の作品以上に強者感が半端ではなく、また市との交流も今までとは少し違う。心の交流というわけでもなく、分かりやすい剣のライバルというわけでもない。ささいな会話にも互いの信条がぶつかり小さな火花が散っているような絶妙な関係性なのだ。それがラストの一騎打ちに効いてくる。

殺陣はすごく目立つものは少ないのだが、ラストの雪舞い散る中での一騎打ちはシリーズ随一の殺陣だ。カットをできるだけ少なくして、長回しで二人の目にも留まらぬ剣捌きをこれでもか魅せてくれる。そして、まさかのラストには思わず男泣き。

座頭市の映画は割と関係ない事件が重なったりする脚本が多いのだが、今作はその辺でも最初から最後まで一貫したストーリーがあって非常に観やすい。クライマックスはシリーズ屈指のものであり、情という側面から見た座頭市の姿は心温まるものがある。暴力をテーマとした割と陰鬱な作品が多いシリーズの中では、人間ドラマとアクションが綺麗に揃った名作だ。

2回目 4点
(2023年1月9日 Blu-ray)

1回目 4点
(2018年3月19日 iTunes)
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