こたつむり

オープン・ユア・アイズのこたつむりのレビュー・感想・評価

オープン・ユア・アイズ(1997年製作の映画)
3.5
★ 目を閉じておいでよ 顔が奴と違うから

「これ、なんだか見たことがあるな」
いわゆるひとつのデジャヴ(既視感)。
映画におけるその正体はオマージュ、あるいはパク(以下略)。そう珍しいものではない…と思います。

だから、本作でデジャヴに陥っても当然の話。
…ではなく。僕の場合、単純にリメイク(『バニラ・スカイ』)を先に鑑賞していたのを忘れただけでした。嗚呼、哀しきトリ頭。

でも、そのお陰で不思議な体験が出来ましたよ。まるで世界が一巡(天国への階段)したように、先の展開が“何となく”読めたのです。確かに伏線が伏線になっていない(隠れていない)とは言え、心の中の残像を追い掛ける感覚は神秘的。

しかも、本作は現実と夢を揺蕩う物語。
どこまでが現実で…どこからが夢なのか…主人公とのシンクロ率はかなり高かったと思います。

ただ、その反面、終盤の展開は“説明過剰”に感じました。『アザーズ』のときにも思いましたが、アレハンドロ・アメナーバル監督の丁寧な描写が裏目に出たのでしょう。

勿論、この丁寧さは長所でもあります。
主人公の内面が空虚(アイデンティティが自分の外観だけ)だと伝わってくる演出は素晴らしい限り。観客を突き放す展開でも、物語の吸引力が下がらないのは圧巻でした。

そして、彼の心を奪う女性を演じたのがペネロペ・クルスというのも見事な配役。当時23歳という“若さ”に満ち溢れた美貌ですからね。そりゃあ“親友が恋した女性”に横恋慕したくなるのも当然の話ですよね(実際に手を出したら“鬼畜”ですが)。

まあ、そんなわけで。
現実の曖昧な境界線を描いたサスペンスの先駆け。現代の視点で鑑賞すると先読みしやすいのが難ですが、それは本作で蒔かれた種が他の作品で花開いたから…とも言えます。

だから、観客としては。
リメイク(主演:トム・クルーズ)を選ぶのか。それとも、オリジナルである本作を選ぶのか。

お好みに合わせて選べば良いと思います。勿論、両方という選択もアリですね(この欲張りめッ)。ちなみに僕のオススメは片方を鑑賞した後に記憶を失うことです。トリ頭最高。
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