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ある女の存在証明のpikaのレビュー・感想・評価

ある女の存在証明(1982年製作の映画)
3.5
「赤い砂漠」以上に濃厚な霧のシーンが凄い。画面の向こうなのにうすら怖い不穏感。
意味深なクローズアップが非常に意図的で謎めいているが全然わからん。

主役が映画監督だし自伝的な作品なのかと勘繰りつつ、これまで社会や哲学や愛などの広義的な虚無を象徴的に描いてきて、ここで個にフォーカスを当てるのかと興味深く、アントニオーニの「だから愛は不毛なんだってば!」という叫びが聞こえてきそうな展開が愛らしい。
アントニオーニ作品はだいたいラストで女が泣くとかなんとか言われているが、そこで終わらず眼前にあるものから明後日の方向へと興味や意識が飛んでいったかのようなエンディングが素晴らしい。
アントニオーニ自身の逃避とか願望とか希望とか、何だかそんな潔さみたいなものを感じられて、これが単なる虚構のドラマであるならばその先はなかったかもしれないような、作家性を超えた個人の思いみたいなものが爆発した感じが魅力的。

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