1917年ポルトガル・ファティマ村で7万人が体験した “マリア出現の奇蹟(ヴァチカン公認)”の初映画化。監督は「謎の下宿人」(1944)のジョン・ブラーム。音楽は「風と共に去りぬ」(1939)の巨匠マックス・シュタイナー。
1910年、ポルトガルは革命により社会主義政権が成立。反宗教感情の嵐の中でカトリック教会は弾圧を受けていた。1917年5月13日、田舎村ファティマの丘で遊んでいたルシアら三人の子供の前に聖母マリアが現れ“世界が罪を犯すのをやめなければさらに悪い戦争が起こる”と予言。そして”毎月13日にここに会いに来たら半年後の10月13日に「信じるためのしるし」を示す“と約束する。この話が口コミで広まると警察から村の教会は糾弾され、子供たちは「嘘をついた」と白状するよう脅迫される。しかし噂を聞いた多くの人々が国中から続々と村に足を運びだし。。。
エンターテイメント性が上手く加味されていてかなり楽しめた。フォーマットは1858年ルルドでのマリア出現を描いた「聖処女」(1943)と類似しているが、クライマックスの数千人の群衆と“太陽の奇蹟”によってスペクタクル感が生じている。
信ずる者たちの前に奇蹟が出現するプロットと演出は後に「大魔神」(1966)や「未知との遭遇」(1977)等のファンタジー映画に引用されていることを再認識。
信仰ドラマとしては、例えば「聖処女」のベルナデッタは14歳なので内省が描かれていたが、本作の場合はルシア10歳ハシント7歳とまだ子供のため、本人たち以上に両親や周囲の大人たちの反応が厚めに描かれていた。口コミによってファティマ村に集まってきたのは、戦乱で家族を失った者や当時ポルトガルの貧困に苦しむ人々。本作は信仰を社会学的に捉えるきっかけにもなりそうだ。
主題曲はシュタイナーがグノーの“アベマリア”にアレンジを加えたもの。太陽が虹色に輝く壮大な奇跡のシーンで“アベマリア”を用いることが可能なのは、ローマ教皇庁公認の奇蹟を描いた本作の特権である。このシーンにはクリスチャンではない自分でも言い知れぬ感動を憶えた。
“日本人なのでキリスト教関係は理解できない”との言い分は、西欧文化を理解できないと宣言しているのに等しい。最近は自分も勉強を怠っているので、せめて映画での学びを持ちたいと思う。