mimitakoyaki

ブレスのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

ブレス(2007年製作の映画)
3.3
ハ・ジョンウ サランヘヨ祭、本日も開催しております。

ジョンウさん目当てで見たら、なんと!「牯嶺街少年殺人事件」のチャン・チェンが絶望した死刑囚の役で出ておりまして、ナニコレ、神様からのご褒美ですか♪と喜びました。

しかし、めちゃくちゃにヘンな作品でした。
いや、キム・ギドクの作品だからおかしな世界観やら変態性は通常運転なわけで、この作品がヘンなのも「ギドクの映画だから」の一言で片付く気もしますが、例えば一度も船から降りずに老人と船で生きてきた少女をめぐる「弓」なんかだと、もうはじめの設定がファンタジーなので、これはそういう現実離れした話だって思えるんです。

ですが、この作品は、夫の浮気により冷めてしまった夫婦のくだりは現実的ですが、その後、刑務所内で自殺未遂をした死刑囚のニュースを見た妻が、死刑囚に関心を持ち(絶望感に共感したのか?)、刑務所に会いに行くところから、だんだんおかしなことになっていくのです。

それはもうツッコミ連発で、え?コレはふざけたコメディか?と途中思うくらいです。
はじめはガラス越しの面会だったのが、2回目の面会では面談室に入れて、しかも芸術家ならではの発想なのか、雪も降る真冬なのに春の服を着て、面談室に春の風景の壁紙を張り巡らし、ラジカセ持ってって春の歌を熱唱するんですよ。

え、韓国って刑務所でそんなんできるの?と思ってたら、謎の保安課長の許可によって可能になってて、だから実際のルールとは違うんでしょうけど、危機管理どないなっとんねん!って思ってしまうわけです。

というか、刑務所の危機管理もむちゃくちゃですが、この死刑囚に会いに行く妻の歌がヤバくて、多分たいていの人は、春のワンピース着て死刑囚との面会であんなにハッチャケて異様にヘタクソな歌を熱唱されたら、あ、ヤバイ人来た…って引きまくると思うのですが、死刑囚は心惹かれていき、夏や秋…と面会のたびに主婦の四季のプレゼントを喜び、もちろん見張りの刑務官が立ち会ってるのですが、お構いなしにキスしたりとかするんですよ。
ありえねーー!

しかも、夫が知っていく展開とかもむちゃくちゃだし、その後の「冬」の面会もさらにエスカレートしますからね、あり得なさ過ぎてマジメに見てられなくなってきました。

主婦が最後に死刑囚にした行動について、いろいろ考えてみると、主婦は子どもの頃に溺れて5分間の臨死体験をした時に恐怖と恍惚を感じたと言ってたので、死刑囚ともそのような恍惚を味わって2人の結びつきを完全なものにしたかったのかな…と思いましたが、どうなんでしょうか。

結局、妻の行動の動機もよくわからないし、「冬」に夫が刑務所まで送って行って無邪気に娘と雪遊びをして待ってるところも理解不能だし、死刑囚の写真の取り扱いも、いい加減学習しなさい!とも思うし、作りが雑な気がして入り込めなかったです。

とは言え、クーリンチェで少年だったチャン・チェンは大人になっても素晴らしく精悍で、喉を刺して自殺を図った事からか声が出ないという設定なので、一切セリフがなくて、表情で演じてるんですね。
これがまた素晴らしかったです。

そして、ジョンウさんは浮気夫ですが眺めてられます。
ジョンウさんとチャン・チェンとの板挟みなんて、それってドリームやないですか!
しかし、ちょっと迷って、やっぱりジョンウさんですね♡
チャンよすまぬ…
いかん、また妄想が…。

そんなこんなで、ギドクのヘンな世界に連れて行かれたのでした。

114
mimitakoyaki

mimitakoyaki