TaiRa

シュトロツェクの不思議な旅のTaiRaのレビュー・感想・評価

-
誇大妄想家の狂人変人が未開の地を目指す『アギーレ』『フィツカラルド』の間に作られ、形は違えど近いとこにある映画。イアン・カーティスが自殺する前日に観ていたとか。

幼少期から20年以上精神病院にいた路上音楽家ブルーノ・Sが、刑務所から出所した路上音楽家シュトロツェク・ブルーノを演じる。ブルーノ・Sの脆く繊細な姿が印象的。暴力ヤクザの情婦を家にかくまって、隣人の爺さんと楽しく過ごす瞬間もあるが長くは続かず。ヤクザから逃げるように渡米。「誰でも金持ちになれる」と信じたアメリカでも待つのは辛い現実だけ。恋人も友人も家も失って「心配事はなくなった」シュトロツェクとグルグル回る車と踊り続ける鶏が虚しい。

『アギーレ』などの大自然によって挫折していく男と対照的に社会のシステムによって挫折するシュトロツェク。銀行への逆恨みが素っ頓狂な方向へ行き床屋を強盗するシーンは、哀しくなるほど馬鹿馬鹿しい。終わった後に向かいのスーパー直行してすぐ捕まるのもどうかしてる。
TaiRa

TaiRa