ハレルヤ

君を想って海をゆくのハレルヤのレビュー・感想・評価

君を想って海をゆく(2009年製作の映画)
3.9
フランスの港町カレからイギリスに住む恋人の元へ行くために、ドーバー海峡を泳いで渡ろうとするクルド人の青年ビラル。偶然出会った水泳コーチとの交流を含めて難民問題へ真正面から向き合ったヒューマンドラマ。

監督のフィリップ・リオレがフランスでの難民事情を徹底的にリサーチした上で製作された本作。実際問題一言二言で片付けるのは難しい問題ですが、本作で描かれているのは監督からの率直なメッセージ。

苦しい環境に置かれる難民たちの姿をビラルの目線を通じて描写されています。あの手この手で何とかイギリスへ逃れようとするも、フランス側もそうは簡単にさせてくれない。協力する一般市民にまで罰則を与えるという厳しい状況。

そんな中でもビラルを助けようとする水泳コーチのシモン。最初は無謀な賭けに出ようとするビラルを止めようとするも、彼の恋人に対する真摯な姿勢に心を動かされ、自身も別居中の妻を大切にしようとする。

シモンの演じるヴァンサン・ランドンの渋い演技は本作の魅力の1つでしょう。親子愛にも似たようなドラマに、じんわりと温かさが滲み出てきます。

劇中は現実的な場面が多く明るい気分にはなれません。それでも日本に住んでいるとあまり実感出来ないフランスの難民問題をしっかり捉えた作品。一見の価値は十分あると思います。
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