いの

ニックス・ムービー/水上の稲妻のいののレビュー・感想・評価

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鑑賞後に、「アメリカの友人」と今作の始まりを見比べてみた。黄色のイエローキャブ。たしかに同じカットでした。その「アメリカの友人」に出演したニコラス・レイという方は、「理由なき反抗」や「大砂塵」など、名匠と称されるうちのひとりらしい。この映画は、ヴィム・ヴェンダースが、NYにいるニコラス・レイを訪れる場面から始まる。一緒に映画を創ろうということになっていたらしいのだけれど、ニコラス・レイは病に苦しんでいて、余命もあと僅かということで、ヴェンダースは、映像を撮るべきか否か、悩んでいく(それはモノローグで語られる)。この映画自体、ドキュメンタリーの風貌をしながら、フィクションも混ざっていて、ヴェンダースの揺れと映画自体が共鳴しているかのようだった。自宅では咳き込み息をするのも苦しそうなニコラス・レイが、いざ大学で講義する段になると、紫のシャツに細身のスーツでキメていて、さすがのイケ爺ぶりだった。ヴェンダースが撮影を続けるか否か迷っているときに、ニコラス・レイは迷わず「撮れ」という。ふたりの間にある同志感というのか師弟感というのか、そういうことも伝わってきた。
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