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ニックス・ムービー/水上の稲妻のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

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途中で観てはいけないんじゃないか、やめた方がいいと、観る側が躊躇するくらい、製作側も撮影をやめた方がよいのではと、ヴェンダースは迷っていました。

自身の末期の状態を撮すことをニコラス・レイ監督は受け入れ、カメラが向けられると演技をします。

ドキュメンタリーとフィクションの繋ぎ目がわからなく、メイキングビデオと思われる粒子の粗い映像がいつの間にかきめ細やかな映像に切り替わり、人生の演者となったニコラス・レイがカメラの中にいました。

死の淵まで演じるのを望んだとはいえ、連日の撮影からみえるのは衰弱した末期の老人。アーティストである二人のぶつかり合いというより、巨匠が若手アーティストに生きる道を教えているかのようでした。ヴェンダースは当時35歳。

二人は話し合い、映像、音楽、演出を確認していく。ニコラス・レイを直接肉眼で見るときには希望を抱くのに、カメラは残酷でカメラを通すと絶望しかない。まるで、カメラが意思を持っていて勝手に撮してしまうかのようだ、というヴェンダースの言葉が印象的でした。

先日観た「スワンソング」とニコラス・レイが重なりました。このままベッドで死にたくない、最期まで華やかな映画の世界で生きていたい、と。

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