SHOHEI

ファンボーイズのSHOHEIのレビュー・感想・評価

ファンボーイズ(2008年製作の映画)
3.8
16年ぶりの続編『スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス』の公開が半年後に迫ったある日。いまやファンを辞め、漫画家になる夢も捨てて家業を継いだエリックは熱狂的なスター・ウォーズオタクのライナス、ハッチ、ウィンドウズらと久々に再会する。ライナスとは絶好中だったが、彼が余命わずかしかないことをエリックは知る。数日後、エリックはルーカス・フィルムの本拠地スカイウォーカー・ランチに忍び込み、エピソード1のフィルムを盗み出そうと思い立つ。ハッチ、ウィンドウズ、そしてライナスらはその計画に賛同し、車ひとつでサンフランシスコに向けて旅立つ。

余命わずかの友人にスター・ウォーズの新作を見せる。馬鹿げた題材のはずが、実際に現実では公開前の『エピソード7 フォースの覚醒』をルーカス・フィルムが余命いくばくかの癌患者に見せたというエピソードも生まれ、一種の真実味を帯びてしまった珍妙な作品。舞台は新三部作がこの世に発表される以前の、旧三部作(とスピンオフ)だけがファンの全てだった世界。本作で登場するスター・ウォーズファンの新作に対するボルテージは決して盛った演出ではなく、ほぼノンフィクション。YouTubeにも映像がアップされているが、エピソード1公開初日の熱狂っぷりは凄まじく、公開初日を無事迎えたことを神に感謝する者、シアターでチャンバラをする者も多数現れとんでもないお祭り騒ぎとなった。そんなエピソードも実際にあったからこの映画に登場するオタクたちの熱量には感情移入してしまう。彼らは道中スタートレックファンたちに喧嘩を売りながら、聖地スカイウォーカー・ランチを目指す。アンチ・スタートレックな映画かと思いきや、実はトレッキアンにも優しい目配せをしたずるい作品。スカイウォーカー・ランチ侵入の鍵を握るのがカーク船長役のウィリアム・シャトナーというのが面白い。他にも『THX 1138』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』など多くのSFネタを盛り込んでいて実は守備範囲が広い。肝心のスター・ウォーズネタには黒歴史となった『ホリデー・スペシャル』起源のものも。また字幕では拾いきれていないネタもちらほら。で、本作のプロデュースにはあのケヴィン・スペイシー、ありし日のハーヴェイ・ワインスタインも絡んでおり意外とビッグタイトル。ただしキャスト、スタッフとワインスタインの関係は決して良くなかったとか。またプロットに友人の余命に関するエピソードが含まれないバージョンも製作されており、試写でコンペが行われた。登場人物の中で最も熱狂的なオタク、ハッチを演じるのは『ファンタスティック・ビースト』シリーズのジェイコブ・コワルスキー役や『ジ・オファー ゴッドファーザーに賭けた男』のフランシス・F・コッポラ役で最近とみに脚光を浴びているダン・フォグラー。ヒロイン役のクリスティン・ベルは『アナと雪の女王』のアナの声優を務めているのも意外。華がないと思いきや意外とある。ファンだったら漏れなくマストな一作。ラストのひと言にも絶対笑わせられる。
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