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エリート養成機関 ナポラのzogliのレビュー・感想・評価

エリート養成機関 ナポラ(2004年製作の映画)
3.2
なんでキャストに主人公役のマックスリーメルトが入ってないんだよfilmarksさん?

過去に一度だけ観たけど日本語版がどうしても手に入らなくて「before the fall」という英題で出回っている英字幕版を購入(なので、レビュー内の用語が日本語字幕/吹替とは異なる可能性大です)

1942年、少年を集めて教育と訓練を施すナチスのエリート養成所ナポラが舞台
「衣食住は保証される」「生まれや家柄は無関係、皆が同じ身分でスタート、個人の努力次第で上を目指せる」…若者にとっては大変に魅力的な謳い文句 人生を変えるまたとないチャンスだと、とくに裕福でもない家の子供は思うだろう
主人公フリードリヒもその1人
親の反対も家出でおしきり憧れと期待を胸にボクシングの腕をかわれ誘われたナポラに入ってみれば、そこで待ち受けるのは古城での寄宿生活、厳しい規律と訓練、上級生からの嫌がらせ…全ては根性論、落ちこぼれは不要物、情けは捨てろと繰り返し教えられ、心を殺して指示をこなしながら内なる良心と現実との相違にもがく日々
戦況は変わり訓練生までもが銃を構えて捕虜の掃討に出なければいけなくて、身の回りで身近に命が潰え また自らが誰かの命を奪わなければならない環境に変わっていくなかで、友の選んだ道に涙し、このままで自分はいいのだろうかと葛藤する、みずみずしくも危うい話

まぁナチ映画なので人死の描写はあるけどガチの戦闘描写までは無いので耐性の無い人でも多少はいけそう
海外版観たからぼかしも何も無かったけど全く性的な意味でなく裸が出てくる
アルブレヒトのシーンだけ安っぽくて後半の大事なパートなのに興醒めだったけど思えば15年くらい前の作品だし水中表現の手法に限界もあったんだろうな〜うまく加工してリマスター版とか出てくれないかな

いだいた希望が萎んでいくのに従って笑顔が消えていく主役の演技も良かったし、見目麗しい制服姿の少年達も見どころではあるけれど、注目すべきは父と息子の複雑な関係の描き方だと思った
フリードリヒと実父の「厳格な父の言う事は絶対」「それに対する反発心」みたいな昔ながらの父子関係と、ナポラに入ってからのボクシングの指導を兼ねる上官と主人公との実父よりも打ち解けた擬似父子のような関係を対比的に表現するのも良かった

けど、なにより友人アルブレヒトとナチ高官である彼の父との、忌避と愛情の複雑に混じった父子関係が良かった
体格も小さく心も高潔で繊細で、戦闘事よりは文学を愛する芸術肌の息子を疎ましく思う「ナチ高官」「権力者」としての立場が強調されて描かれる反面、父親としては確かに息子を愛していて でもそれを表立ってあらわすわけにもいかず「too weak」と自分に言い聞かせて別れを自分に納得させてる感じはネタとしてはよくある見飽きたパターンだけれど、それに加えて “体格も申し分なく戦闘能力も備えている息子の友人=主人公を有望な若手としてとりたてあからさまに贔屓して息子の嫉妬を誘う” という捻くれエピソードも絡まっていてなかなかのこじれ具合だったのはユニークだった

主人公とアルブレヒトの関係には個人的には同性愛的な捉え方は出来なくて、極限状態+唯一心通わせた友人+主人公が最近組織に入ったばかりで精神的にはまだナチに染まりきってないという背景を考えるとあんな感じでもおかしくはないような
ただ、あの試合に勝ってアルブレヒトの父親に取り入って最終的に高官の息子的な立場になって上を目指す事すら出来たはずなのにそうしなかったのはやはりただの同僚以上の存在であったのだろうとは思う

アルブレヒト役が成人してて16歳役やってたらしいけど違和感皆無
フリードリヒ役のマックスリーメルトもこの頃はこんなに愛らしかったんだなー
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