綾

エリート養成機関 ナポラの綾のレビュー・感想・評価

エリート養成機関 ナポラ(2004年製作の映画)
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ナポラといえば、アンソニー・ドーアの『すべての見えない光』を思い出す。ヴェルナーやフレデリックのいた、閉ざされた異様な世界。ナチス政権下のエリート養成校。

正義と悪はほんとうに相対的なものだし、人の強さや弱さを推し測る絶対的もの差しなんて存在しない。そう頭では理解していても、どうしたって混乱してしまう。人間の心の動きは、ほんとうに、ほんとうに複雑なんだと思う。

繊細な文学青年アルブレヒトは、『ジェネレーションウォー』のフリードヘルムを思い出さずにはいられない。トムシリングはこういう役がほんとうによくはまるなあ…

すべてを俯瞰した神の視点、かつ、ナチスや第二次大戦が「過去のもの」(あえてこの言葉を使う)である私からすれば、アルブレヒトは誰よりまともに見えるけれど、もしあのとき、あの場所に、私もいたなら、どうするやろう。何を思うやろう。

ナポラのことを少しでも知りたくて本作を観たけど、当時、実際にナポラにいた青年たちのことが、ますます分からなくなってしまった。彼らは何を感じ、何を思ったのやろう。“この映画が良くなかった” わけではなくて。想像すればするほど、実際の彼らが遠のいていってしまう。
本編のどのシーンより、エンドロールの数行が重たく響いた。

ラストのフリードリヒの表情がとても印象に残っている。
綾