mh

フェイトレス 〜運命ではなく〜のmhのレビュー・感想・評価

5.0
ハンガリー製の骨太なホロコーストもので、ノーベル文学賞作家イムレ・ケルテスの少年時代の話。
反戦が下地にある普通の戦争映画では拾わないようなシーンがいっぱいあって、かなり新鮮な視聴体験になった。
ハンガリーの憲兵の一貫しないユダヤ人政策とか、収容者たちとあまり接点がないナチス親衛隊とか、収容者同士で助け合ってる様子とか、かなり目新しい。
警官が目配せで逃げろといってるのに逃げない主人公とか、キャラ造形がやたらうめー。一般人は躊躇する行動をとるのが主人公ってパターンはよく見かけるけど、この、差し伸べられた手を取らないパターンでも主人公になり得るんだなと変なとこに感心する。
全体を通して「かわいそうなユダヤ人」「残酷なナチス親衛隊」にしてないあたりが、本当に好もしい。
それもそのはずで、ラストのモノローグでこの映画のテーマそのものがズバリ語られる。絶望を描くためには希望も描く必要がある。その逆のことをこの映画はやっていたのだった。
十まであるうちの八か九まで写してあとは暗転という構成も効果的だと思った。撮影もやたらきれいだった。
序盤の伏線をある程度回収しつつも、すべてをあきらかにしないまま終わるのもとてもうまい。
大物ゲストキャラのダニエルクレイグさんがいい役やってた。肩のワッペン、キャプテンアメリカっぽい「A」のマークはアメリカ陸軍第三軍のそれで、パットンが率いた部隊とのこと。
ほかのシーンが地味でどうかというと晦渋なのに、ダニエルクレイグさんとこだけド派手でわかりやすいので、実際のとこ、なくても良かったかな?
これまで見た戦争映画のなかで「戦場のピアニスト」がトップクラスに好きなんですけど、それに近い感想を持った。
いやーすごかったなぁ。
なんでぜんぜん、見られてないんだろ、これ。
めちゃ良かったです!
mh

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