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メイキング・オブ・ドッグヴィル 〜告白〜/ドッグヴィルの告白のpanpieのレビュー・感想・評価

3.8
えー!
メイキングを別のDVDにするなんてずるい!
「マザー!」なんてあの素晴らしいメイキングが映像特典として入っているじゃないか!
ケチ臭い…
わざわざ別にするんだ…
でもこの当時はメイキングも後日発売みたいな感じだったのかな。
TSUTAYAで見つけてやっぱり借りてしまった。(^^;;


2002年1月スウェーデンで撮影が始まる。
あの線を引いただけの仮想の町ドッグヴィルの住人を演じる俳優たちに演技指導をするラース・フォン・トリアー監督。
普通ならこのシーンは誰と誰だけしか出ないから出ない他の役者は控え室で待機という事は「ドッグヴィル」では無く町全体も映すからどんな胸糞のシーンにも自分が演じなくてもその場にいなくてはならない。
グレースとチャックのあのシーン、「カット!」の声がかかってもその場から動けないニコール・キッドマン。
やっと起き上がると監督に歩み寄り抱き寄せられて泣いていた。
最近では悪役もこなすベテラン女優の域に達しているニコールの素の彼女を見れて良かったと思ったがメイキングを撮ってると知っての演技?
そんな風に思いたくない。
大女優でもこんなシーンは演じた後泣く事もあるんだ。
町の人達に酷い扱いを受ける映画の後半からニコールも精神状態が悪そうだったと共演者が語っていた。

トムを演じたポール・ベタニーも結構精神的にきていてかなりイラついていた。
このままだと降板しかねないと思う程「帰りたい」を連発していたし監督と今にも喧嘩が始まりそうな一触即発な二人の喧嘩に近いやりとりでポール・ベタニーも追い詰められていたと分かった。
あんな役なんだから無理もないけど。

見ていて辛くなるストーリーだけどこのメイキングを観るまで役者の気持ちを考えた事はなかったので皆普通の人間なんだと実感できて良かった。

あまりにも迫真の演技を見せられるとどうしても役者の嫌なイメージがついてしまってそれがなかなか払拭出来ない時もある。
チャックもベンもトムも他の映画にまた嫌な役で出ていたらやっぱり…と思ってしまう所だった。
悪役を演じてなんぼとそれに嫌悪感を持ってくれると役者冥利につきるのかもしれないけど今作は殺人犯とかではなくその辺にいそうな人間の嫌な面をリアルに演じていたからそういった意味でも今作見れて良かった。

監督が泣いている所もあってやっぱり「ドッグヴィル」は演じる側だけでなく制作サイドも相当追い詰められたんだなぁ。
こんな現場で皆仲良しこよしはおかしいけど監督も神経尖るんだ。
親しげに接してくるローレン・バコールを無視ではないが上手くかわしていたりしてもしかして本当に人間嫌いなの?とニヤっとしてしまった。
そうでないとこんな脚本書けなくないよなぁ。
ストーリーが胸糞なのにこの設定!
冒頭で売れないかもしれないと神経質になっていたし。

メイキングは良かったけれど1時間弱の今作を映像特典としなかった事で評価は少しマイナスにした。
トリアー作品を全部観てないので分からないけど「ドッグヴィル」の出演者は恐らくもうトリアー監督作には出ないんじゃないかと思った。
観ていない作品もまだまだあるのだけど続けては鑑賞する気になれない。
たまに明るい脚本書いて欲しいけどそれじゃあ監督らしくない。
ほとぼりが冷めた頃に他の作品をまた観る事にするとして正直今はしばらく離れたい。
忘れ難い強烈な映画だった。
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