まぴお

平成ジレンマのまぴおのレビュー・感想・評価

平成ジレンマ(2010年製作の映画)
4.0
【2年後の未来】

戸塚ヨットスクール事件で逮捕され2006年に刑期を終えて現場に復帰した校長の現場のドキュメンタリー。


重い。ひたすら重い。

一般的に現代の認識は

「体罰=悪」となっている。

そして体罰の象徴になった「戸塚ヨットスクール」も悪とみなされた。
事件前の体罰の描写では目を伏せたくなるシーンが続く。
映画で見る暴力と現実に起こった暴力はここまで違うのかと改めて認識させられる。


しかしそのイメージが強い現在でも入学金315万円、毎月11万円の生活費とけして安くないこの値段でも毎年、戸塚ヨットスクールに入学を希望する生徒があとを絶たない。


校長はインタビューで体罰がなくなり
過保護に育てられゆとり教育から社会は「ニート」や「引きこもり」を作り出したと主張する。

確かに体罰が全盛期だった頃は「不良」や「非行」が目立っていた。

しかしこの戸塚ヨットスクール事件により
校長が逮捕された以後、体罰は悪と社会に認識され徐々に駆逐されていった。
そこから「非競争社会」は生み出され目的をもたない人格が生まれた。


体罰は暴力だから犯罪だ。
体罰は相手への愛情の躾だ。

たぶん両方とも正しくて両方とも間違っている。
ここで確かなのは両者の理論は一方通行であること。
ここに平成のジレンマが生まれる。

そして体罰の定義が個々で違うこと。
時間ひとつとっても「ちょっと遅れる」という定義は
人によっては1分かもしれないし10分かもしれない。
中には1時間がちょっと遅れると定義する人もいる。


人は嫌なことから目をそらそうとする
そして物事の原因を外に見出そうとする。

社会全体が病んできているのか?
その闇から目をそらし続ける人たち。
体罰の全盛期だった昭和時代。
ゆとり教育全盛期だった平成時代。
この2つの時代のジレンマは2年後、新しい元号になったときどう映るのだろうか?

599本目
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