71フラグメンツの作品情報・感想・評価

「71フラグメンツ」に投稿された感想・評価

踊る猫

踊る猫の感想・評価

3.8
挑戦的な作品だ。なんなら挑発的と言っても良いのだろう。一応は大学生が銀行強盗を行い自殺する事件が描かれているのだが、そこに難民や義理の家族、冷え切った関係の夫婦や親子の話が絡み合い、しかしそうした明らかに本筋とは無関係な「断片(フラグメンツ)」を語る意図はあからさまにされない。いや、そもそもミヒャエル・ハネケは銀行強盗の話すら表現したくないのではないか。たまたまこれは観た私が頭の中で偶発的に繋がるパズルのピースの産物であって、人に依っては別のピースの産物が頭の中で繋がるのだろう。ハネケ節とも言える長回しもまた見事で、難解ではあるのだけれど(観終えたあと苦行を強いられた気分なのだけれど)、スジ自体よりショットひとつひとつの鮮烈さが頭の中に残留し続ける。なんの感情も喚起させない、音楽で言えばオウテカの作品のようなものか。
ミヒャエルハネケ初期三部作の三作目。(スンマセン間違って二作目と書いてしまいました。。)

一作目の「セブンスコンチネント」と内容やテーマはほぼ一緒。

一作目は1988年辺りのドイツが背景だったのに対して、今回は1990年のドイツが舞台。
どちらも"実際にあったと思われるニュースの一片"から脚色していった内容で、
一作目と同じく挟み込まれる各セクション毎のブラックアウトやテンポ感が向上。
その分、分かりやすくなりつつも、構図やヘビーさは薄くなった印象。
しかも登場人物が若干多くて、物語の最初に"答え"を見せられてる関係で、その布石がどう繋がっていくかの過程が楽しみで見続けなきゃいけない感覚になりつつも、老人の長電話のシーン辺り、1時間経過する辺りぐらいから似たようなテンポ感にダレちゃったのがマイナス。

頭が悪いから知らんけど、当時のドイツは第二次大戦から這い上がるのにここまで色んな事があったのか、と思ったり。
忙しさや国家的問題の中で記憶から消え去っていくような"動機の分からない事件"を鋭く掴んで映画にして記録する辺りは流石としか言えない。

そして、ここまで引っ張った割に最後はやっぱり"見せない美学"のハネケw


オチが秀逸すぎて笑ったww
堊

堊の感想・評価

4.2
DVD付属インタビュー内で監督のハネケ自身が饒舌に(核心までも度がすぎるほど)語るように「構造の秘密とは長さ」なのである。71 Fragments of a Chronology of chance と原題で題されている通り、71の欠片であって大筋となるストーリーラインは存在しており最終的に個々の話がオーストリア銀行の大量虐殺というカタストロフへ収束していく様子は本作の多くの評でこれまで指摘されてきた通りガスヴァンサントの『エレファント』やアルトマンの諸作品を思い起こさせる。正直なところFragments と題されるからには『コヤニスカッツィ』のようなバキバキの編集でめぐるしく変わる場面による幻惑的作用を期待していたので冒頭のアンビエントな雰囲気を持つロマの少年の脱出を描く長回しには肩すかしをくらった。しかしこれが不思議な心地よさを生み、何ら説明もなく話が展開することもないまま、優雅に夜景を捉えたまま10分が経過したころには黒味を多用したfragmentsによる冗長でありながら過度に説明的でない本作の編集リズムに釘付けになっていた。
fragmentsから成立する全体を考えるほど漠然としていき、個々のカットの検証からは離れていく。なので一番印象に残ったものを一つここで挙げる。難民のロマの少年が駅構内をさまようシーン。駅でホームの端をひとり歩く少年。ホームの端を歩いていることを駅の放送で咎められるのだが、少年は言葉が通じないためわからない。鳴り響くアナウンス。向かいのホームにいた現地の男の子がロマの少年を指さして笑う。それに気づきはにかむ少年。対岸の男の子も手を広げてロマの少年の真似をして振り子のようにしてホームの端を歩く。あまりにギリギリを歩くのでヒヤヒヤする。気が付くと画面内には死の香りが横溢する。ここでカメラは二人を同一の画面に入れるためにホームに入る電車の主観ショットのような正面の位置に移動する。二人は手を広げて互いにホームの端ギリギリに立ち、振り子のようにして歩いている。ロマの少年は手首をわずかに曲げている。幽霊、いや天使のように見えなくもない。少年は立ち止まりホームに垂直に向き合うと向かいの少年へ微笑み、そして数歩下がってゆっくりと走り出す。ホーム内へと飛び込んでしまう寸前、電車が到着する。暗転。次の場面へ。
こうした不穏な場面は何度も我々の前にあらわれては消えていく。終盤のテロの惨劇の被害に遭った死体から流れる血を延々映し続けるショットに代表されるようなある種のハネケ監督によるいやらしさに辟易したものの、全体を覆うコミュニケーション不全の主題とそれを巡る観客への饒舌で丁寧すぎるほどの演出は成功している気がする。
原題を日本語訳すると「ある機会は年表の71の断片」で、断片を綴り一つの出来事に帰結させる初期ハネケらしい作品

不法にオーストリアへ訪れたルーマニアの少年や養子を求める夫婦、凄惨な殺人を犯す大学生等の人物を断片的に描いているが、直接的な説明を避けているため押しつけがましさを感じず様々な想像ができて作品にそれだけ深みが生まれているのに相変わらずハネケの巧みさが垣間見える

各地の紛争のニュース映像が逐次挿入されるのも意味深かつ不安感があり、いつこの紛争の映像と同列の出来事が起こるかと終始そわそわさせられた

そして訪れる惨劇もあっさりとしてかつじわりと後味の来る驚天動地なもので、わかりきってはいたけど開いた口の塞がらない衝撃を他のハネケ作品同様覚えてしまった

それにしてもニュース映像に加工された部分もあってか、見ている間この映画が実話を基にしているのかどうか怪しく感じられたが、もしファーゴ同様実話のふりをした作り話だとしたら編集技術も中々のものだ
nagaoshan

nagaoshanの感想・評価

3.9

このレビューはネタバレを含みます

ミヒャエル・ハネケ監督作品!

71個の断片…
パズルの様に、人々の日常が合わさっていきます。

クリスマスのウィーン
19歳の大学生が銀行で銃を乱射…
3人が死亡、自分も犯行後自殺…
この字幕が流れて数ヶ月前から物語がスタートします

登場人物が多いのとシーンのカットが速くてニュース映像も頻繁に挿入されて展開についてくのに焦りました😅

そんなかでも印象に残る長回しのシーンが
かなり唸りましたね〜^_^

夫婦の会話シーン…
夫の突然の告白に妻が戸惑い、狼狽して言葉で攻めてからの夫の突然のピシッ🤚‼️
愛が溢れとる…

老人と娘の電話📞会話シーン…
娘とは上手く関係がいってなくて、孫ちゃんの声を聞かせてくれとせがんで、
孫ちゃんと嬉しそうに話しているところがぐっときましたね〜^ - ^

そして、卓球🏓!シーン
確信犯ハネケ監督の罠…
観てのお楽しみ笑( ^ω^ )

ラストのゆっくり床が赤く染まるシーンはやるせなさと深いため息が出てしまいましたね…

良か映画!
pika

pikaの感想・評価

5.0
ハンパじゃねぇな!終わり方が秀逸過ぎる!
様々な人々の日常の断片を切り取るだけで、ありふれたいつも通りの日常を僅か数分ずつ少しずつ並べていくだけで、その対象となる人物の人間味がジワジワと生々しく溢れ出て、いつしか他人ならざる感情を抱かせてしまう、そんなきめ細やかで完璧な演出に脱帽して禿げ上がった。

自分の中にあるカッチカチに凝り固まった価値観を映画を通じて丁寧に解きほぐし、同じ物事がまるで別物のように見えてくるかの如き新たな価値観を生み出すモンタージュ。

結末があって過程を描いていることは別としても、いや、その前提があるからこそ映画全体から漂う「死」の日常性。
「誰もがいつどこかで出会うかもわからない」「加害者と被害者の違いなんてものはなく、誰もがどちらにでもなり得る」という緊張感が、ごくごく普通の日常を羅列しているだけなのに延々と持続し、「死の匂い」を漂い続ける。
言葉にしてしまえば拍子抜けするくらい当たり前なハナシだけど、死ぬまでに出会うことなく生命を全うする人々が多いこの世界で、それを映画という媒体を通して「自分の脳で気づき、理解する」という体験をさせ、新たなる価値観を経験させた作品の存在意義に慄き感動した。
さちえ

さちえの感想・評価

3.5
よくわからなかったというのが正直なところ。しかし、なにか惹きつけられる。永遠とひとりで卓球をしているシーンがとても印象に残った。
ヒロ

ヒロの感想・評価

4.6
感情の氷河化三部作の第3作目。

タイトルにあるようにこの映画は、偶然の時間序列における71の断片によって綴られている。複数の主人公、不自然なカット割り、シーン毎に挟み込まれる2〜3秒の黒味、この映画には有り余るほどの余白がある。観客は劇中に出てくる複数の主人公たちの繋がりを探り、不自然なカット割りに意味を求め、提示された黒味に創造の画を妄想し始める。ハネケは観客の知的好奇心を逆手に取り、今作にあるはずのない物語性を生み出すことに成功してしまっている。観客を映画の1ピースとして組み込むことをハナから想定した、上から目線の映画作りにヤられた。ハネケの手にかかれば難民問題やマイケル・ジャクソンでさえダシになる。メディアによる真実の磨耗というダシに。

が、ムチだけでは終わらないのがハネケ。
結婚という契約に縛られ上手くいっていない夫婦のやりとりだったり、孤独に押し潰されそうな老人が救いを求める電話のシーンだったり、絶望に掻き消されそうな中、微かに見える人間への希望も映っていた。

そうだよ、ハネケは天才なんだよ。

2017-
ニュースや雑事や趣味に埋もれて曖昧になっている我々の生活は、死によってハッキリさせられる。
人と人の間には雑音が多すぎて気持ちなんか伝わらない。
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