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マージン・コールのGreenTのレビュー・感想・評価

マージン・コール(2011年製作の映画)
3.0
いや〜、アメリカのリストラは厳しいですなあ。今は日本もこうなのかな?

オープニング、大量のリストラがなされるオフィスで、ウィル・エマーソン(ポール・ベタニー)が若い社員に「顔を上げるな!目を合わせるな!」と、リストラ担当会社から来た人たちを避けるように言っている。

この辺は『マイレージ・マイライフ』で描かれた解雇の模様を彷彿とさせましたが、こっちの方がめっちゃドライです・・・。

この会社はウォール街の投資銀行なのですが、リスク管理部の部長エリック・デール(スタンリー・トゥッチ)も解雇される。個室も与えられ、長年勤めてきたのに、15分で社外に出され、携帯電話も止められる。

外でリスク管理部門のさらに偉い責任者、役員幹部のサラ・ロバートソン(デミ・ムーア)を見かけ、「携帯も止めたのか!」と絡むけど、彼女は「私はなにもしてないわよ」と言う。

大量解雇が短時間で終わり、証券マンを仕切るボスのサム・ロジャーズ(ケヴィン・スペイシー)は、残った社員に「君たちと君たちのボスの間にいる人間は7人から3人になった。君たちは選ばれた者なのだ。がんばってくれ」とか言う。

デミ・ムーアとケヴィン・スペイシーなんて最近観ていないので興味を持って観たのですが、デミ・ムーアはもっと活躍して欲しかったです。ケヴィン・スペイシーは、すごい太ったね〜。でもこういう役は上手い。

意外と良かったのが、若手社員ピーター・サリヴァンを演じたザカリー・クイント。最初イーライ・ロスかと思ったけど、こんな若くないよなあとか思ってたら、『スター・トレック』のMr. スポック演じた人ね!ああ〜。

ピーターはエリックの下で働いていて、慕っていたらしく、エリックが解明しようとしていたプロジェクトを託される。同僚たちがクラブに繰り出していく時間に、エリックから渡された資料を見てみると、会社が破産の危機に陥っていることが解る。

こっから同僚に電話し、クラブにいた同僚は一緒に遊んでた上司のポール・ベタニーを連れてオフィスに帰り、資料を見たポール・ベタニーはそのまた上司のケヴィン・スペイシーに電話し、ケヴィン・スペイシーは役員幹部に電話し、緊急役員会議が開かれる。

夜中の2時ですよ!!

上級役員幹部が42歳。「こういうことが起こるんだよ」と、この会社に勤めて34年のケヴィン・スペイシーが若手社員に言う。ほんとにね〜、サラリーマンやってると、「なんでこの人が」って思うような人がすごい役職に就いていて不思議になる。

この話は、リーマンショックがモデルなんですけど、いやしかし、このサブプライム・ローンの話、どう聞いても構造が理解出来ない。『マネー・ショート』もちんぷんかんぷんだったもん。単純には解るんですよ。頭金とかゼロにして、バンバン貸しまくる。私みたいなフツーの人が、すっごい豪邸とか買えちゃう。変動性のローンだと、最初の5年は金利ゼロとかで払えちゃうんだけど、5年過ぎたらガーンと金利上がってとても払えなくなる。

こういうリスクが高いローンをいっぱい抱えていたら、お金回収出来ないから、そうすると破産の危険があるってのは解る。私が解らないのは、なんでそんなものをバンバン売ったんだよ、ってところで・・・。

どうもエリックってリスク管理部のリストラになった部長は、そもそもの予想が間違っていて、それを計算し直している途中でリストラされちゃって、若手のピーターが、エリックが解明出来なかった計算式の間違いを解明して解ったらしい。

このピーターは、ロケット・サイエンスとかできちゃうすごい科学者級の人なのに、この頃は、証券マンになった方がすげー金稼げるからってこの会社に就職したらしい。こういう人、この頃多かったんだって。だって、ポール・ベタニーが1年で$2ミリオン?稼いだとかって。ミレニアル世代の人なんかに考えられない世界だよね。

で、リスク部門の役員であるデミ・ムーアは、責任取って辞表を出させられるハメになる。だけど彼女は、何度もリスクがあるって役員会で言ってたのに、無視され続けていた。

いやー、ひどい話だけど、これが本当なんだよね〜。リスク管理部門とか置いて、リスク管理させているのに、その人達の言うことを聞かないで粗悪商品を売り続け、んでやばくなったらその人達を解雇する。

アホか。

劇中ではこの会社は生き残る。どーしたかって言うと、ヤバいローンを他の金融機関に売りつける。これをやると、お金は入ってくるけど、業界での信用を失う。会社もそうだけど、証券マンも個人的に。でもそれをやらないと会社が救えないからと社員にやらせといて、で、その社員をリストラする。

この会社に34年も生き残り続けたケヴィン・スペイシーのキャラ。離婚して一人暮らし。愛犬は亡くなる。

ラストはまさに「墓穴を掘る」ってヤツですかね。

いやほんと、身につまされる。映画的にはサスペンスというか、リーマンショックが起こった時社内で何が起こっていたかの舞台裏がなかなか面白い。ザカリー・クイントのキャラなんて『アメリカン・サイコ』のクリスチャン・ベールみたいな人なんだろうけど、もっと人間味のある側面を描いているし、ケヴィン・スペイシーのキャラもそうだよね。あんな大量解雇してヒドイ人たち!って思われてた上の人たちの葛藤を描くっていうか。

ラスボスのCEOはジェレミー・アイロンが演じているんだけど、このキャラはやっぱ社員なんて将棋の駒程度にしか思ってないんだなあって感じがした。まあでもなあ、うちの会社なんて、ほんっとにデキない/やらない人たちを解雇できないでグズグズしているから、この会社みたいに数年に一度大量解雇ってのも悪くないなとは思うけど(笑)。まあそん時に自分が切られたらショックだけど(笑)。
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