おさかなはフィッシュ

監獄人別帳のおさかなはフィッシュのレビュー・感想・評価

監獄人別帳(1970年製作の映画)
4.0
何だこれは!!? ちょう面白いぞ!!!

海岸近く、男女別の列になった囚人たちがワーッと駆け寄り合って揉みくちゃになる。寄せる波のような、生のエネルギー。「おとこ!」と声を上げる顔のうれしそうなこと。異様なまでのおおらかさに、まず驚かされる。
身体検査でも歌って踊って大騒ぎ。かと思えば拷問は拷問で手抜かりなく。感傷的ではあるがどう考えても長すぎる回想シーンなど「それはそれ、これはこれ」なポリシーのもと、どこもキッチリやり切ろうとするので、転がるようなテンションの変化に翻弄される。

悪徳長官はこんなところに赴任してしまったのが運の尽き。長老に大立ち回りを演じられてしまったり、もう見ているこっちがかわいそうになる。いつの時代も役人はつらいね。典獄から主人公たちへ。脱獄囚から悪徳長官へ。武器を手渡すというアイデア。厳しい自然の前ではみな同じ、よくあるテーマでも見せ方が好きだった。

手錠をかけると動きが制限されてしまったり、最後はお決まりで手首を切り落とすしかなくなったり、あまり面白くなるイメージがなかったけれど、お見それしました、面白かったです。
こんな映画だから、とりあえず効率なんざ関係なしに雪まみれになってもがく。ロープウェイのシーンは人間の身体って実際どこまで耐えられるのか……!?とつい想像してしまった。
他にもスキー、ソリ、馬! 乗れるものにはどんどん乗っていく。特に意味はなくロシア風の衣装で現れたり、こういう全部のせみたいなの、私は好きだな。最後の紅白幕は天晴れ! 映画の祝福だった。



「北の大地で大暴れ!」的なあらすじが面白そうだなと思って鑑賞。クマが出たら百点!と思ったけれど、この時季はお休み中か……。
「月形潔」って冗談みたいな名前だなと思ったら、むしろ実在の人物で、姓から取って地名になっているのね! これまで知らなくてびっくり。
網走監獄で「おっかさん」と言うと、条件が揃ってバルス的に何かが発動しそうな気がしてちょっと面白い。

「手前関東流れ者、一匹狼の〜橘(↑)真一です(↓)」が、ホストのマイクパフォーマンスか何かみたいで面白すぎてダメだった。
「お・た・が・い・に!」「気持ちがいいじゃねえか……」とか、台詞がキュート。

「手錠(ワッパ)が見ていた 男の情け」「手錠できれぬ クサイ仲」、これもまた予告編がよかった。こういうセンスを涵養していきたい。