翔

恍惚の人の翔のレビュー・感想・評価

恍惚の人(1973年製作の映画)
3.5
今の世の中でこそ『認知症』という名で認識されている症状が『老人性痴呆』または『ボケ』という言葉で通っていた時代。ケアワークが社会問題ではなく家単位での問題、または責任、または汚点として扱われていた時代。

とある家長が妻の死とほぼ同時に認知症になってしまう。家長は孫や娘息子のことを忘れ、息子の妻だけを信頼するようになる。我関せずの夫、薄情な義妹から全てを『任された』妻はみるみる認知症が進行していく義父の世話に追われることとなる。

時代の差か認識の差か、信じられないほどに理解が無い展開がどこまでも続く。確かにどこまでいっても創られた物語であるが、切り取られ強調されている分クリアにストレートに当時の認知症と環境が感じられる。

流石に酷く描かれ過ぎているのではと思うような人間模様もあるが、あり得ないと決して言い切れない。観るべき映画かは別として、知るべき問題。ケアは社会問題であり決して一人の問題ではない。
翔